原作が分からないほど改変すれば不正にならない?
パロディでもなく、盗作や贋作で不正をしようというのでもない。ただ、著作権や商標権の関係で使用が困難な知的財産を、知恵を絞って使いたい……というニーズも世の中にはあります。同様の希望を持つ読者は多いのではないでしょうか。
例えば、iPhoneケースを売るのに「あの人気スマホ」と言い換えたり、オリンピックイヤーに「頑張れ日本代表」と宣伝チラシを打つ例は巷に溢れています。
他にも、ディズニーやサッカーワールドカップ、阪神タイガースなどなど、メジャーなブランドやキャラクターを自社のPRに利用したいという話です。
原作をそのままパクったり、コピー商品を作るわけではないのだから、著作権者の不利益にはならないはず。それなら違法ではないだろう……と。
結論から言うとNGです。著作権法ではなく、商標法や不正競争防止法に引っ掛かる可能性が高いからです。
オリンピックは商業的に使えない?
オリンピックを例に説明しましょう。
大会ロゴマーク(いわゆる五輪マーク)やエンブレム、「TOKYO2020」「がんばれ!ニッポン!」といった商標、さらにJOCが管理する選手の肖像、日本代表選手団の映像やイメージなどは、IOC(国際オリンピック委員会)やJOC(日本オリンピック委員会)、大会組織委員会が管理しており、公式スポンサー以外はこれらを商業的に使うことはできません。
すなわち、店頭に無断で五輪マークのポップを張り出したり、「がんばれ!ニッポン!」とプリントしたTシャツを勝手に作るのは商標法違反となります。
最悪、損害賠償を求められる可能性もあります。
その抜け道として、五輪マークや「がんばれ!ニッポン!」に少し手を加えた場合はどうでしょう?
「がんばろう日本!」「4年に1度スポーツの祭典」「日本代表、目指せ金メダル」……これらJOCと大会組織委員会が商標登録していないロゴやコピーなら商標法はクリアできるかもしれません。
しかし不正競争防止法という別の法律に抵触する可能性があります。
同法では①周知表示混同惹起行為と②著名表示冒用行為を禁じています。
「混同を生じさせる」「紛らわしい」のはアウト
①は「需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為[2条1項1号]」(この際の「混同」とは、現に発生している必要はなく混同が生じる恐れがあれば足りる)で、つまり消費者に誤認させることです。
②は「他人の商品・営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為[2条1項2号]」で、著名なブランドにタダ乗り(フリーライド)する行為です。
これらについて違法と認められれば、民事による差し止めと損害賠償請求、さらに違法性が高いとなれば刑事罰の可能性もあります。
町の商店がチラシに謳ったくらいでIOCやJOCの不利益にはならないのだから黙認して欲しいと思うでしょうが、公式スポンサーはこれらを使うために高額な協賛金を払っており、それなしに五輪マークが使えたならばスポンサーの成り手は減るでしょう。
つまり、五輪マークの不正使用や類似した紛らわしい商標を黙認することはIOCやJOCの不利益となるのです。
プロ野球やディズニーでも同様です。どれだけ知恵を絞って修正を加えても、消費者に誤認を与えるような抜け道は使わない方が賢明でしょう。
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