連載コラム・欲しくて探して買ってみた:名刺印刷

秋吉純子秋吉純子

名刺印刷の評価

編集長から嫌がらせのような指令メールが届いた。

「最近の取材、インターネット購入ばかりで楽をしているようなので次回は『現実店舗で名刺100枚を予算3000円』で作るように。それと期限は12月中ね」とのこと。

いやいや、アタシが楽してるんじゃなくて、ネットでないと安くて短納期で買えないからしゃーなしに買ってるのよ。言いがかりにも程があるワ!

それなら今回のお題、一切ネットに頼らず買ってきてやろうじゃないの!……ということで、今回は昭和の刑事ドラマみたいに脚と勘だけを頼りに名刺探しに挑戦です。

名刺印刷なんてその辺で簡単に作れるはず……

とか言いながら、名刺印刷なんてそこら中でやっているに違いない。

だって街を歩けば至る所に【名刺印刷】って看板を見かけるし。

ところが、仕事帰りに自宅の最寄り駅周辺を歩いて探索してみると、確かこの辺りにあったはずのハンコ屋が閉店してテナント募集中に! ま、しゃーないな、あの店主やったら。いつ見ても老犬を膝に乗せてテレビを見てるだけで仕事している雰囲気、一切なかったし。

気を取り直して、翌日は某都市型ホームセンターに行きました。秋元康風に言うとTKH。

ここならなんでもあると信頼しきって「名刺を」と尋ねたところ、一夜にしてインフレが起こったかと思うような金額を提示され気を失いそうに。

イラストレーターで作った名刺の版下データをUSBに入れて持って来てると伝えたのに、「データ作成費が6372円かかる」とのこと。

「はぁ!? データがあるのにデータ作成費が要るの!? なんでやねんって突っ込んで欲しいからでなく!?」。

周囲のお客がクスクス笑うのも気にせず、本気で尋ねるアタシがそこにいました。

「はい。それ以外に名刺作成代として100枚4968円。年賀状の時期で非常に込み合っているので納期は10日かかりますがよろしいですか?」って、よろしいわけあるか!

たった100枚の名刺が1万1340円だなんて! 普段アタシがネットで買ってる名刺なんか送料込みで300枚1020円だってのに。

もちろんTKHですから高品質な名刺なんでしょうけど、アタシはまだそんな高額名刺をバラ撒ける程の器じゃないの。すごすごと撤収です。

10分名刺の看板で10分名刺を断られる

仕切り直しで翌日、仕事終わりに職場近くの商店街を攻めます。

確か横断歩道の向こう側に名刺印刷って書かれたテントがあったはず。

と、ドーンと目に飛び込んできました。

【待ってる間にできる! 10分間名刺】の文字。期待感モリモリで突撃です。

店に入ると、テレビのバラエティで大阪のオバちゃん代表としてインタビューを受けていそうな妙齢の女性が店番。

「今から人と会うので10分名刺を作ってもらえますか?」と尋ねると、

「オネエチャン、10分なんかで名刺刷れるかいな」と身も蓋もない返答。

よくよく聞くと、定番フォームに名前や住所を入れるだけの名刺が10分らしい。

ところがオバちゃん、「それでも10分は無理やけどな」って、看板に偽りありまくりやん!

歯向かってみたけど都合の悪いことは聞こえないフリでスルーされるので、USBでデータを持参したことを伝えたら、
「データとか無理やわ。今の名刺見せて、それをスキャンして作った方が早いで」とえらく乱暴な提案をくれる始末。

挙げ句に、
「あ、カラー名刺は高いし、スキャンするから同じ色にはならへんで」とアドバイス。ここまですごいと怒りではなく、尊敬の念すら湧いてくる自分が不思議です。

「ちなみに、それでお願いしたら値段と納期はどれぐらい?」と尋ねると、この条件でまだうちの店で頼もうっていうの!? という驚愕の表情を浮かべながら、
「版代別で3500円から。それと今、年賀状で忙しいから年内は無理」。

さらに間髪入れず、
「商店街の先にサウナがあるやろ。確かあの向かいに印刷屋があったわ。そこなら安いし早いし、まだ閉店に間に合うから急いで行き!」と親切ぶって体よく追い出されちゃいました。

すでに夜7時。明日その店に行ってみるか……めっちゃピンチや。

有名印刷チェーン店でやっと発注完了

それにしても、どの店も年賀状で忙しいから納期遅いって、よく平気で言うよなぁ。

名刺のお客にとったら、あんたらが年賀状で忙しいことなんて関係ないし……あ! 「期限は12月中ね」ってクソ編集長、こうなること知ってやがったな!

翌日、チャリをぶっ飛ばすこと5分。

オバちゃんに紹介してもらったその店はなんと関西では有名な印刷ショップのチェーン店! 完全にノーマークでした。教えてもらわなければ一生行くことはなかったかも。

勿論、USBでのデータ入稿なんてお手のもの。

あっという間にやり取りは終わり、翌日の昼には出来上がるということ。

価格は、100枚2916円で持込データなら版代は540円。

ネットと比べれば高いけど、TKHで1万円と言われ、おばちゃんに手持ちの名刺をスキャンすると言われたことを考えると……いや、もうこれ以上店を探し歩く情熱は持ちあわせておりません。この店で印刷をお願いしました。

届いた名刺

名刺の正面

箱入りの名刺

現実店舗で買うのは大変なお題

実は今回、自分へのカセとしてネット買いどころかグーグルで店を検索することも禁じ手にしていました。自分の目と足だけで現実店を探すと。

だけど、あんまり見つからないので一度だけ【最寄り駅名 名刺印刷】をキーワードにネット検索したのです。

ヒットしたのは職場から徒歩15分の印刷屋。

データ持込みなら版代なしで100枚2160円。しかも年賀状時期ながら納期は3日。

正直、ここに買いに行きたかったけど、絶対に自分の足だけで発見できない場所なので泣く泣く諦めたのです。

ネットがない時代はみんなどうやってたんだろう?

一度利用した近所の店が良かったら、値段や納期など比較対象店がないから、ずっと固定で利用し続けたんでしょうね。

だけど、一度ネットの便利さを知ってしまったアタシには、今回の【現実店舗で買う】はとても大変なお題でした。

店が見つからない、値段や納期が合わない。比較グセが止まらずに少しでも得な方を選択せずにいられなくなっているって、よく考えると怖いし、世知辛いよなー。

記者プロフィール

秋吉純子
秋吉純子
LEDサイン販売会社に在職中、飲食・物販など300にのぼる業種へ取材訪問して販促を実施。その後、マーケティング会社でマイカル系GMSの新店舗出店前調査や、アイデア雑貨メーカーで企画開発、ネット事業を担当。女性目線で消費者の生の意見を吸い上げ、商品開発や既存商品の改革など行なってきた。現在は、ホールインワンの記念品販売サイト「アーカイブプラス」を運営。一般社団法人イーコマース事業協会・元副会長。趣味は廃墟・工場めぐり、ビール、サイクリング。モットー「酒は世界の共通語」。 http://www.holeinone-golf.net/