ラベルを付け替えてお誕生日ワインボトルを売るのはダメなの?

関口慶太関口慶太

Q アルコール度数のラベルを剥がしてお誕生日ワインボトルを売ったら違法?

当社では、市販のワインボトルや日本酒ボトル用のオリジナルラベルを作成して通信販売しています。その手順は、1お客様が指定する銘柄のお酒を弊社が購入→2ボトルの全てのラベルを剥がす→3『お父さん お誕生日おめでとう!』などのメッセージと似顔絵を当社で印刷してラベルをボトルに貼るというものです。つまり、当社ではお酒とオリジナルラベルをセットで販売しています。
 

ですが、当社は酒類の販売業免許を取得していません。また、ボトルのラベルを剥がす際、アルコール度数やメーカー名を表示したラベルも全て剥がしています。こうした行為は法律違反に当たらないでしょうか。
 

A 表示義務のあるラベルを剥がすのはNGなので税務署に相談を

お酒メーカーが、誕生日、還暦祝い、敬老の日、その他記念日向けにオリジナルラベルを作成して販売するケースがあります。この場合は、およそ酒類販売免許の有無やラベルを剥がす行為の違法性は問題にならないと考えられます。
一方、ご質問のケースのように、販売会社がお酒メーカーでもなく、酒類販売免許も持たない場合は問題ないのでしょうか。問題をシンプルにするため、会社が作成するオリジナルラベルには著作権法上も商標法上も問題がないものとしてお答えします。
 

ご質問のケースが酒類の販売業に該当するかどうかから検討しましょう。
「酒類の販売業」とは、酒類を継続的に販売することを言います(法令解釈通達)。したがって、個人が贈答品や家庭の余ったお酒をインターネットオークション(メルカリなど)や地域のバザーで販売するような場合は、継続的に酒類を販売したとは言えないため、販売業免許は必要ありません。
 

しかし、ご質問のケースのように、法人が反復継続して酒類の販売を行う場合は、「酒類の販売業」に該当するため、販売業免許が必要となります。
 

酒類を販売するためには、酒税法に基づき、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から販売業免許を受ける必要があります(酒税法9条1項)。販売業免許を受けないで酒類の販売業を行った場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されることとされています(酒税法56条)。
 

所轄の税務署に相談するのが安心です


 

酒類の販売業免許は、大きく「酒類卸売業免許」と「酒類小売業免許」の2つに区分されています(法令解釈通達)。
「酒類小売業免許」のうち、通信販売によって酒類を小売することができるのが「通信販売酒類小売業免許」です。一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許は別の免許に区分されているため、ご質問のケースのように通信販売をしたい場合は、予め通信販売酒類小売業免許を申請する必要があります。
 

しかし、晴れて通信販売酒類小売業免許を取得したとしても、販売できる酒類は地酒、輸入酒など一般の酒販店では通常購入することが困難なものに限られる上、酒類の卸売をすることが可能な者(酒類卸売業免許を取得している者や酒類製造者)から酒類を購入しなければなりません(税務署の通信販売酒類小売業免許申請の手引を参照)。
つまり、仕入れ先は無制限ではありません。とすると、手順1の「お客様が指定する銘柄のお酒を弊社が購入する」ことは自由にはできません。予めお客様が選択できる銘柄を絞る必要があります。
 

さらに、お酒は容器(ボトル)に表示しなければならない事項が定められています(酒類業組合法86条の5)。
しかも、その表示の大きさやフォントにまで定めがあります。表示の具体的な内容は、「名称」、「内容量」、「アルコール度数」、「食品関連事業者の氏名又は名称及び住所」、「製造所又は加工所の所在地及び製造者又は加工者の氏名又は名称」等です。
こうした事項は、一般的にボトルの裏側のラベルに記載されています。ご質問のケースでは、こうした義務的な表示が記載されたラベルまで外してしまっておりますので止めましょう。
 

以上のことから、ご質問の業態をなされる場合は、所轄の税務署にご相談される必要があります。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。