反社会的勢力をシャットアウトしたい。仕事の注文を受けないための店の対策は?

関口慶太関口慶太

Q このお客、暴力団?怪しい注文を受けたら入札停止になる?

当店は、ハンコ屋です。暴力団関係者と思われる方からの注文の対応について相談があります。
 
当店は、暴力団関係者からの注文をお断りしています。当店は役所の入札にも参加しているので、もし暴力団関係者との付き合いがあるという理由で役所の仕事ができなくなると困るからです。ところが、時折、ご注文者の風体を見ると、暴力団員ではないか? と思われる方がおります。ですが、外見だけで判断して、お客様に「貴方は暴力団員ですか?」と聞くこともできません。しかし、もし暴力団関係者に商品を販売してしまったら、当店は入札停止になるのでしょうか……?
 

A ネット検索や法務局で謄本の確認を。判断が難しいなら警察に要相談

政府は、暴力団関係者等の反社会的勢力が取引先になった場合の被害を防止し、円滑な契約関係解消に至れるよう、契約書や約款に反社会的勢力の排除条項を入れることを推奨しています。そして、警察庁をはじめ、様々な省庁が業界団体ごとの反社会的勢力排除のモデル条項を公開しています。
 
ご質問のとおり、暴力団関係者は行政の仕事をすることはできません(東京都暴力団排除条例第7条)。そして、暴力団等への利益供与をしていると認められた場合も、入札参加の除外になることがあります(千代田区契約関係暴力団排除要綱等)。
もっとも、東京都暴力団排除条例では、事業者が事業に関して締結する契約が「暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認められる場合」に、契約の相手方が暴力団関係者でないかを確認するよう努める旨を定めていますが(同第18条第1項)、一般的に相手方の身分を確認しないような取引にまで身分の確認を求めるものではありません。例えば、印鑑ケースや朱肉をお客様が購入するようなケースにまで、身分の確認が必要というものではありません。したがって、暴力団員に商品を販売してしまった、というだけで貴社が「暴力団関係者等」と認定されることはありません。
 
ただし、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることを知りながら、継続的な契約関係を結ぶことは利益供与の禁止(同第24条)に該当しますので、継続的な契約関係が生じうる場合には特に注意が必要です。
 

 

とはいえ、実際、お客様に「貴方は暴力団員ですか?」と伺うことは難しい場面が多いでしょう。そこで、基本的な反社会的勢力の確認方法をご案内いたします。
 
まず、インターネット上の検索エンジンを用いる方法や法務局で企業の謄本を確認する方法が挙げられます。例えば、個人名や法人名を検索すると、過去に本人やその関係者が逮捕された事実が報道されていたり、関連キーワードに「ヤクザ」「詐欺」等が挙がることがあります。名字が変えられていたり、SEO対策がされている可能性もありますので、検索ページを遡って確認しましょう。
また、企業の謄本を取得すると、取締役や本店所在地の変更が頻繁なケースや、本店所在地が不自然な場所に移動しているケースが見受けられます。こうした場合は、法人が反社会的勢力に買われて利用されている可能性があります。
その他にも、取引の内容に照らして契約や納品を急かされるケースや、不自然に条件が良いケースは怪しんだ方が良いでしょう。条件が良くとも納品が先の場合、取込詐欺の危険もあります。本店所在地が近い場合、懇意の金融機関に相談することで、良からぬ噂がないか教えて貰えることもあります。
 
そして、どうも怪しいという場合、警察に相談することをお勧めします。警察は反社会的勢力に関する情報を収集しています。契約相手を特定するための情報、契約書類、契約相手が暴力団関係者の疑いがあると判断した資料を持参すると、相手方が暴力団員か、暴力団員と密接な関係を有する者かなどの情報をお答えいただけます。私の経験上、お答えいただくためには「暴力団関係者の疑いがあると判断した資料」は必須です。ここで、情報収集の成果が活きるのです。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。