遡ること昨年の8月末。次回の連載用にと、新聞で紹介されていた「自爪から3Dプリンターで作るネイルチップ型取りキット」を取り寄せていました。
ネイルチップとは「忙しくてネイルサロンに行く暇がない」「オフィスでネイルがNG」という女性が、自爪に両面テープや接着剤で貼り付けるつけ爪のことです。付け外しができ、サロンに行かなくても本格的なアートネイルが楽しめるのですが、自分の爪のカーブや大きさに合わせるのが難しく外れやすくなってしまうのが難点。
でも、このキットを使えば自爪にフィットするオリジナルネイルチップが自宅で作れるので、問題は一発解決! 作り方も簡単で、2㎝四方の透明な樹脂状のものを熱湯で軟化させ、自爪にあてて5分ほど放置すれば爪の形状が型取りできるというもの。これを両手10本すべて採取し、お店に送ると自分専用のネイルチップが登録できます。その後、数百種類あるネイルデザインの中から好みのものを指示すれば、自爪にピッタリの自分好みなネイルチップが届くというものでした。
しかーし! 指先が綺麗だと美人度2割増の信条のもと、毎月ネイルサロンでジェルネイルを施しているアタシには、このキットを使って爪型を採取するタイミングがなかったのです。さらにこのお店。
ぴったりなネイルチップを作ってくれるのはいいのですが、ネイリストが1本1本手描きしているらしく、両手で8000円近くとなかなかのお値段。型取りキットが2350円。両方合わせると1万円超え!編集長の渋い顔がチラつき、型取りするのを先延ばしにしていました。でも一念発起して型取りをしようとホームページに作り方を確認しにいくと、なんとこのサービス、去年の8月で終了しているではありませんか! 慌てて電話すると、再開は5月以降とのこと。やばい。企画がポシゃる!
機械でネイルプリントに作戦変更!
どうしようかと困っていたら、呑み仲間から「簡単にネイルをプリントできる機械を買った知人がいる」との情報をキャッチ。ここはひとまず、オリジナルのネイルチップ作りはペンディング。100円ショップで買ったネイルチップに、その機械でネイルプリントしてもらうことにしました。
ただ、紹介してもらったものの所有者本人とは連絡が取れず、仲介の方とのやり取りのみ。既存のデザインから好きなものが選べるという情報と、お店の住所、電話番号しか分からず、事前にネットで調べても男性エステのホームページしか出てきません。「え、マジでネイルのプリント機なんてあるの?」とビビりながらの訪問です。
お店はオートロックの高層マンションにあり、インターホンを押すと若いイケメンのエステティシャンが出迎えてくれました。中に案内されるとエステの機械と一緒に大型の電子レンジのような箱がテーブルの上に1台。よく見ると正面に液晶モニターがついていて、ネイルの動画が流れているじゃありませんか!
「おお! もっと自宅にあるようなちゃちなプリンターを想像していたけど、なんかえらくちゃんとした機械ですね」とつい本音がポロリ。
機械の隣にはネイルチップにプリントされたサンプルが並んでいます。結構細かいデザインもプリントできるのね……と眺めていると、え。ちょっと待って。ネコの写真や芸能人の顔写真が入ったネイルチップがあるではないですか!
「もしかして写真を持ち込んだら、それをプリントすることもできるの?」と尋ねると、イケメンは満面の笑顔で、
「ペットの写真が1番人気なんです。画像データをUSBを持参すれば、この機械を使って大概のものはプリントできますよ」って、なんやねん! アリもののデザインしかプリントできないって言うから手ぶらで来たのに、持参した画像が印刷できるんだったら、時間がもったいないけど出直すわ! とそそくさと退散しました。
機械に指を入れて印刷……って、先に言っといて!
数時間後、データ持参で再訪問! USBに入った我が愛犬の画像データを機械に取り込みます。すると、液晶画面にその画像が映し出され、画面のタッチパネルを触ってサイズや向きを調整できます。
「えーなんかすごい。画像に文字を描いたりもできる?」と尋ねるもそこまではさすがに対応していないとのこと。
ここまで下準備をしたら、次はネイルチップへの印刷準備。機械の中にネイルチップを設置してプリント開始かと思いきや、なんとチップを自爪に貼り付け、機械に指を入れないと印刷できないそうなのです。
「もー。何やねん。爪に貼るテープとか何も持ってきてないやん、先に言うといてや!」。あまりの要領の悪さにキレそうになるのですが、イケメンパワーはすごい!「説明不足ですいません。できるか分かりませんが、試しにセロハンテープで留めて、僕の指でトライしましょう」と言い出すではありませんか。
微調整は面倒くさいけど印刷はものの数十秒
サロンでの工程と同様、爪にベースカラーを塗っては乾かしを3度繰り返します。
次こそプリントかと思いきや、ここからが面倒くさい。ネイルしたい指を印刷口に挿入し、液晶画面に表示された指を見ながら、爪の縦横幅に合わせて画像サイズを微調整して合成させるのです。
「これ、お客さんが自分でやるの?」。
「たまに自分でという方もいらっしゃいますが、ほとんどは僕が」。
「ですよねー」。
こんなクソ面倒くさい作業を機械に向かい1人で黙々とこなすなんて、仕事するよりよっぽど疲れるわ。同じ値段払うなら絶対このイケメンにお願いして、ウキウキと世間話しながら2人で機械に向かうほうが1万倍楽しいに決まってる。ということで、イケメンがサクサクと画像を微調整するのを眺め、ようやく印刷準備が整いました。
「じゃ、いまから印刷しますね」とスタートボタンを押すと! まー速い速い。ものの数十秒で刷り上がり、トップコートを塗って乾燥させて完成です。印刷も綺麗!
いやー、ほんとになんでもプリントできる時代になってきてるなー。マジでそのうち、プリントでメイクができる時代が来る気がする。いや来てほしい。熱望するわ。