年賀状の絵柄が同業他社と瓜二つ。デザイナーに他社の仕事を止めさせたい…

関口慶太関口慶太

Q 競合他社のそっくりなイラスト問題。クリエイターが他社で描くのを止められる?

当社では年賀状の絵柄を毎年複数のイラストレーターに発注し、パック商品として販売しています。ところが、当社が採用した絵柄とタッチやキャラクターが良く似た商品が同業他社でも使われることが見受けられます。当社が依頼したイラストレーターが他社でも仕事をしている場合や、別のイラストレーターが当社の年賀状の絵柄に似せているのだと思われます。
 
当社が依頼しているイラストレーターに他社で仕事をすることを止めさせることや、不正競争防止法を利用して競合他社に販売差し止め等をすることはできませんか?
 

A 著作権法と不正競争防止法の両面で商品を保護しよう

デザインの保護に関連しうる法律に、著作権法、意匠法、商標法、特許法、そして不正競争防止法があります(正確には、特許法はアイデア[発明]を保護する法律で、例えばデザインの外観それ自体は保護の対象にはなりません)。このうち、意匠法、商標法、特許法でデザインを保護するためには、特許庁に出願して登録することが必要です。
 
これに対し、著作権法や不正競争防止法でデザインを保護する場合は、特許庁に登録する必要はありません。ですから、貴社が守りたいと考えるデザインが特許庁に登録されていない場合は、著作権法や不正競争防止法の利用を検討することになります。ただし、年賀状の絵柄を登録しているケースは稀でしょうから、今回は絵柄が登録されていないケースを前提に検討します。
 
まず、イラストレーターに他社で仕事をすることを止めさせたい場合は、イラストレーターと「他社で同種の仕事を禁じる内容の専属契約」を結ぶ必要があります。原則として、イラストの著作権は、発注者ではなく創作者であるイラストレーターに帰属します。ですから、将来的に著作権に基づく差し止めや損害賠償を検討するのであれば、専属契約を締結することに加えて、著作権譲渡も合意する必要があります。
なお、専属か否か、著作権が貴社・イラストレーターのいずれに帰属するかを問わず、イラストレーターとの契約は「情報成果物作成の委託」に該当しうるので、下請法が適用される可能性を意識し、発注書や契約書を取り交わすことを推奨します。
 

次に、ご相談のようなケースで不正競争防止法を利用する場合は、例えば周知な商品の信用を保護する2条2項1号(以下「1号」)か、デッドコピーを禁止する2条1項3号(以下「3号」)の適用を検討することになります。
 
1号の保護対象は「同一又は類似の商品」、3号の保護対象は「デッドコピー」と、保護対象の範囲に差があります。3号の方が限定的ですね。もし貴社が競合他社に販売を止めさせたいと考える商品が「絵柄が似た商品」というレベルの場合は、1号の適用を考えることになります。
 
では、1号の方が保護対象が広いのであれば、1号の適用だけを検討すれば良いか、と言うとそうではありません。なぜなら、1号と3号では保護要件に大きな差があるからです。それは、1号が「需要者の間に広く認識されている」という周知性の要件が必要なのに対し、3号は周知性の要件が必要ないのです。
 
ある商品が周知性を獲得するためには、コストと時間が掛かります。毎年11月~1月に限り市場に流通する年賀状の絵柄、という特殊性を踏まえますと、1号で保護を受けることができる絵柄は、ごく限られたものになるのではないでしょうか。そうなると、実際に不正競争防止法を利用できる場合は、デッドコピー商品が出回ったケースとなります。
 
以上の検討を踏まえた平時の対策として、例えば、「イラストレーターに十二支のキャラクターを一括発注し、当該キャラクターの著作権譲渡を受ける。その上で、十二支のキャラクターを定番商品化し、年賀状に限らず、通年の商品イラストに使い続ける」という方法が考えられます。これが実現すれば、季節商品として流通する場合に比べ、著作権法と不正競争防止法の両面で貴社の商品を保護する道がより拓かれます。

 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。