Q ものづくりスペースのレンタル機械でアニメグッズを作ってるお客を注意すべき?
当社はワークショップ工房(ものづくりスペース)を経営しています。当社のワークショップ工房は、工房内の機械(プリンターやレーザー機、缶バッジマシン等)をお客様に時間単位で自由にご利用いただくという仕組みです。
問題は、時々ですが、メジャーなアニメの絵柄でグッズを作るお客様がいらっしゃることです。これを注意しないと、当社も罪に問われるのでしょうか? 注意はしたいのですが、しづらいので、何かいい方法があれば教えてください。
A 会員規約などに「法律違反の可能性がある」と明記しよう
ワークショップ工房は、全国に広がりを見せていて、私の子供も夏休みの工作課題で利用させていただいたことがあります。
まず、著作権者に無断でアニメの絵柄のグッズを作成することは、アニメの絵柄が著作物(著作権法2条1項1号)にあたるため、原則として著作権の侵害にあたります。
しかし、著作権法は一定の条件のもとで、著作権者の許可をとらずに著作物を利用できる例外を幾つも定めています。その例外のひとつが「私的使用のための複製」です。例えば、お客様が自作のオリジナルグッズを個人的にまたは家庭内に準じるような限られた場所で使用することを目的に作成した場合は、例外的に著作権の侵害にはあたりません。例えば、キャラクターの自作アクリルフィギュアを自宅の机に飾る場合は、著作権侵害にあたりません。これが「私的使用のための複製」です。
ただし、これはあくまで私的使用のために許された例外ですから、アクリルフィギュアを販売した場合は著作権侵害になります。また、使用する本人が自作(手足として他者に作業を頼むことは可能)することが条件ですから、他人に作成させた場合は著作権侵害になります。
それでは、もしお客様が著作権を侵害するようなオリジナルグッズを作成した場合、これを注意しないと罪に問われるのでしょうか。
仮に、ご質問のケースが何らかの罪に当たることを検討するなら、著作権法違反のほう助犯(刑法62条)が候補に挙がります。ほう助犯というのは、他人の犯罪を手助けして犯罪の実行を容易にしたにすぎないような場合をいいます。
たしかに、機械を設置したことは犯罪を容易にしたといえるかも知れませんが、それ自体は何も悪いことではありません。そして、注意をしないことも、何か行動をしたわけではありません。何もしなかった、という不作為を処罰することは、逆に言えば、人に特定の行動を取ることを法律が刑罰で強制することになります。
人を処罰するということは重大なことですから、不作為が処罰されるのは、その不作為が犯罪と評価されるような限定的な場合でなければなりません。例えば、ガードマンが泥棒が入ることを見て見ぬふりをすることは、不作為のほう助犯が成立しうると考えられます。ガードマンは泥棒を防ぐ職務上の義務を負っているからです。他方、ご質問のケースでは、そこまで犯罪を防ぐような強い義務があるといえるかは疑問です。そのため、実際に著作権法違反のほう助犯で処罰されることは稀と考えられます。
ただし、ワークショップ工房で著作権法違反を横行させて良いかは別問題です。企業としてのコンプライアンスも問われます。
そこで、申込時の会員規約・利用規約や機械の使用時の注意書きに、著作権法違反になるような利用を禁止することを明記すべきです。抽象的に「著作権法に違反するような利用は禁止します」と書いても意味が分からないので、どのようなケースが著作権法違反になるか、何が著作権法の例外として許されるのかを具体的に記載すると良いでしょう。
一例ですが、
「他者の作成した画像(絵、写真、ロゴマーク等)や他者の肖像(顔写真等)を無断で利用した製作物は、法律に違反する可能性があります。このような製作物を他人に売ったり譲ったりすることはできません」
「規約違反の行為を見かけた場合は、確認させていただくことがあります」等を定めておくことが良いでしょう。
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