Q プリントの保証期間を定めた法律あるの?/昭和のプロ野球団のロゴを使っていい?
お客から「Tシャツのプリントが剥がれたから作り直してほしい」というご意見をいただきました。何度も洗濯乾燥機を使えばプリントが早めに剥がれることはありますが、弊社のプリントはクレームになるほど耐久性が低いとは思えません。弊社では特にメーカー保証期間を定めていませんが、プリントの耐久性について「最低〇ヶ月は保証せよ」といった法律はありますか。
また、「活動を停止したスポーツチームの名称やロゴをプリントして欲しい」とのご依頼があります。例えば、今は母体企業もなくなってしまった昭和時代のプロ野球チームなどです。こういう注文を受けても問題ありませんか。
A プリントの耐久性に関する法律はないが、不測のクレームから守るために保証を設けるべき
運動会・文化祭の季節は、オリジナルTシャツ大活躍の季節です。私が住む自治体では秋に地区対抗の運動会があり、地区毎のオリジナルデザインがプリントされたTシャツが利用されています。
さて、ご質問のようなTシャツのプリントの耐久性の保証期間を定めた法律はありません。Tシャツのプリントを請け負う会社の中には、洗濯耐久テストを実施した上、「○回までの洗濯でプリントが剝がれてしまった場合、初期不良として新品と交換します」という保証を定めている会社もあります。ですが、これはメーカー独自の保証であって、法律に基づく保証ではありません。
意外に思われるかも知れませんが、アパレル製品にも製造物責任法の適用があり得ます。アパレル製品も、製造物責任法の対象となる「製造又は加工された動産」だからです。製造物責任法は、製造物の欠陥(製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます)が原因で生命、身体又は財産に損害が生じた場合の損害賠償について定めた法律です。ですから、例えば衣服の裁断不良が原因で肌が傷ついた場合は、製造物責任法の問題となります。
しかし、Tシャツのプリントの耐久性が原因で製造物責任法の適用が生じるケースは、ちょっと想像できません。また、製造物責任法は、損害賠償について定めた法律であって、保証期間を定めた法律ではありません。「製造物責任法の時効が保証期間だ」という解説も見受けられますが、正確ではありません。なお、消費生活用製品安全法という、一見するとアパレルも適用されそうな名前の法律がありますが、アパレルは同法の対象ではないので、検討対象から外れます。
以上のように、プリントの耐久性について定めた法律はありません。しかし、法律がないからこそ、消費者にとっては各メーカー毎の保証が重要になります。例えば、どのような場合に再製作を依頼できるのか、どのような場合に返品できるのか(またはどんな場合に返品を受け付けないのか)といった規程をホームページに掲載する等して契約条件にすることは、消費者が業者を選択する基準になるだけではなく、業者を不測のクレームから守る盾にもなります。同業他社がどのような保証を定めているかを確認し、できれば業界の水準以上の保証を設けることを推奨いたします。
2つ目の質問にお答えします。確かに、例えばパ・リーグの球団に限っても、近鉄バファローズ、西鉄ライオンズ、ダイエーホークスという名前は消滅しています。過去の球団のファンから、こうした名称やロゴデザインプリントのご依頼があるかも知れません。
過去の連載でも触れました通り、名称やロゴは通常は著作物ではないので、著作権侵害にはなりません(Tシャツ全体のデザインそのものを復刻する場合は、著作権侵害を検討する余地があります)。
もっとも、名称等は商標登録されている可能性がありますので、活動を停止したスポーツチームの名称等であっても商標権侵害になる可能性があります。ダイエーホークスを例にすると、「ダイエー」と「ホークス」がそれぞれ商標登録されていますので、「ダイエーホークス」と完全に一致しなくとも、類似商標として商標権侵害や不正競争防止法違反になる可能性があります。少なくとも、一見して著名な名称やロゴのプリントは、関係者以外からの依頼を受けないことを推奨いたします。
オリジナルグッズの専門誌「OGBSマガジン」なら、オリジナルグッズの著作権、知財権などの法律問題も掲載中!