Q キャラクター設定に創作性はないからコミケの二次創作グッズは訴えられない?
コミケ関係のグッズの注文がありました。当社はパロディ、二次創作に関わらず、著作権侵害にあたると思われる、版元以外からのキャラクターグッズの注文はお断りしています。
お客様にその旨をお伝えしたところ、お客様が「二次創作は違法ではない。キャラクター設定に創作性はないので、原作のキャラを元に自分がストーリーを作って作画するのだから著作権違反にはならない。私が責任を取るからグッズ化して欲しい」と強く言われました。本当に二次創作なら違法にならないのでしょうか?
A 二次創作グッズを作る場合、著作権者のガイドラインをしっかり確認しよう
コミケでは、同人誌やキャラクターグッズといった、無数の二次創作(「ある著作物を元に作られた著作物」をいいます。ただし、正確には「二次創作」という言葉は著作権法にはありません)が販売されています。
二次創作は、同人誌やキャラクターグッズに限りません。「歌ってみた」「踊ってみた」と呼ばれるジャンルの動画作品やMAD動画も二次創作にあたりますが、こうした動画は動画サイトに多数アップロードされています。こうした現状をみると、二次創作は違法ではない、と考える方がいらっしゃるのかも知れません。
しかしながら、著作権者の意に反して二次創作をおこなうことは、著作権法違反の可能性が高いと考えられます。具体的には、同一性保持権(自分の意に反して著作物を無断で変更されない権利。著作権法[以下、法]20条)、複製権(著作物を複製する権利。法21条)、翻案権(著作物を創作的に加工することによって、二次的著作物を創作する権利。法27条)等の侵害になると考えられます。
例えば、あるアニメのキャラクターのイラストを描いてそれをアクリルスタンドにして販売した場合、著作権者の同意がなければ著作権法違反になります。
たしかに著作権法には、著作物を許可なく利用することができる例外規定が複数あります。例えば、私的使用のための例外(法30条)という規定です。この例外にあたる場合は、二次創作は違法ではありません。しかしこの例外は、自分自身や家族、ごく親しい少人数の友人など限られた範囲内で著作物を利用することを目的した場合を想定していますので、著作物をグッズ化して販売するケースは私的使用のための例外にあたりません。
ただ、そのお客様が指摘している「設定そのものは創作物ではない」というのは実はその通りです。
例えば、原作のアイデアやコンセプトを利用するに留めて作成された二次創作は、著作権侵害にあたりません。また、ビジュアル化されていないキャラクターは著作物ではないと考えられています。いわゆる「ポパイ事件」(平成9年7月17日)で、最高裁判所は「一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない」と判示しました。
つまり、①小説のキャラクター設定から触発されて描かれたキャラクターイラスト、②アニメのキャラクター設定のみ利用して書かれた小説、はいずれも二次創作ではありますが、著作権侵害にあたりません。
したがって、「二次創作は違法ではない」というのは飛躍した結論ですが、二次創作の元となる著作物と創作の態様によっては二次創作が違法でないケースもあるのです。
なお、著作権法は親告罪(告訴が訴訟のための条件となる犯罪)ですが、「告訴されない=合法」ではありません。告訴は訴訟となるための条件に過ぎません。日本では多くの著作権法違反が告訴されていないのが実情ですが、商業化するほど著作権者の目に留まります。著作権者自身が積極的に二次創作を推進しようとする場合は、著作物利用のガイドラインを公開しているケースがありますので、ガイドラインに則った利用をするのが良いでしょう。
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