「似たキャラクターをうちの仕事以外で描かないで」。発注先にどう返事する?

関口慶太関口慶太

Q ウチ以外で似たイラストを描かないで問題。「世界観や雰囲気もダメ」…従うべき?

前回のこのコーナーで「イラストレーターが他社で仕事をするのをやめさせたい」という相談がありましたが、私(イラストレーター)は逆の立場で困っています。発注者から「うちの仕事以外で似たキャラクターや世界観のイラストを描かないように」と言うのです。
 
さすがに似たキャラクターを他社向けに描こうとは思いませんが、私のイラストの世界観は独創的なので、結果的に似た雰囲気のイラストになってしまうと思います。発注者にどう返事をすれば良いですか?
 

A デザイナーの個性を奪う行為なので「そのような縛りは受けられない」と正直に答えよう

魅力的な世界観を確立することはイラストレーターの命ですから、それを制限しようとするのは酷な話です。
 
大前提として、イラストの著作権は、職務著作(会社に勤めるイラストレーターが仕事上、法人名義で公表される作品を創作するようなケース)といった例外を除き、イラストを創作したイラストレーターのものです(著作権法17条)。誰が製作費を出したか、誰の依頼で製作したかは関係ありません。
著作権があれば、著作物の無断利用や勝手な改変を禁止することができます。著作権者の法律上の立場は強く、実務でも著作権者に交渉力があるというケースは珍しくありません。しかも、発注者とイラストレーターとの法律関係には下請法が適用される可能性があり、イラストレーターは発注者に対して契約書を取り交わすよう求めることができます(下請法3条)。
 
さて、もし今回の発注者の要望を実現するなら、前回で解説したように「他社で同種の仕事を禁じる内容の専属契約」を締結したり、イラストレーターとの契約書の中に「乙(イラストレーター)は、甲(発注者)が事前に承諾をした場合を除き、第三者とイラスト製作契約を締結するときは、当該第三者に対し、甲に納品したイラストと同一又は類似のキャラクター又は世界観のイラストを納品しないものとする」といった条件を入れることが考えられます。
イラストレーターの立場からすれば、「他社で同種の仕事を禁じる内容の専属契約」は、一社と契約すれば十分な程度に報酬が高かったり、有効期間が限定されているような場合でなければメリットがありません。あまりに不合理な場合は、優越的地位の濫用(独占禁止法違反)の問題も考えられます。
 
後者の条件を受け入れて契約する場合はどうでしょうか。「同一又は類似のキャラクター…を納品しないものとする。」という箇所の意味は分かります。キャラクターのイラストを比較すれば、同一か否か、似ているか否かは比較的判断できるように思えます。
しかし、「同一又は類似の……世界観のイラストを納品しないものとする」という箇所は、どのようにして同一や似ていると判断するのでしょうか。かなり感覚的な話ですね。そもそも、世界観とは法的に何を指すのでしょうか。
 

世界観とは、イラストレーターの画風(=作風)を指すものと考えられます。画風は、イラストレーターの個性そのものです。もっとも、著作権法上、画風そのものは著作物として保護されることはありません(東京高判平成12年2月23日)。画風が具体的に表現されたイラストが著作物であり、個々のイラストが著作権で保護されるのです。
このように考えると、「同一又は類似の……世界観のイラストを納品しないものとする」という条件は、イラストレーターの個性全般を発揮する機会を奪う、実質的に「他社で同種の仕事を禁じる内容の専属契約」と大差ないものになりそうです。
 
以上の検討を踏まえた回答案として、「既に納品したキャラクターと似たキャラクターを他社に納品しないという条件は分かります。ただ、イラストの世界観は、私の個性・画風そのものです。もし似た世界観のイラストの納品を禁止されてしまったら、実質的に他社で仕事ができなくなってしまいますので、そのような縛りはできません」といったものが考えられます。
報酬が十分ならともかく、無理な条件を提示する発注者はいかがなものかと思います。

 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。