生成AIで作ったジブリ風イラストをグッズ製作に使うのはOKか?

関口慶太関口慶太

Q 生成AIによるジブリ風イラスト。作風や世界観の模倣は著作権侵害になる?

生成人工知能(生成AI)を使って作風や世界観をそっくりにしたイラスト作品を作れることが話題になっています。例えば、スタジオジブリ風に描かれた自画像や風景などがSNSにアップされ賛否両論が上がっています。中には、そのようなイラストをグッズにして販売するといった商業利用も散見されます。
 
このような、作風や世界観の模倣は(生成AIの利用に関わらず)著作権侵害になりますか。中には「ジブリ風イラスト」と明示して販売するケースもありますが、問題ありませんか?
 

A 生成AIでも既存作品との表現の類似性が認められれば、著作権侵害の可能性がある

生成AIを使って写真をジブリ風イラストに変換することを「ジブリフィケーション」といい、ChatGPTの有料版を使えば簡単にジブリ風イラストを作ることができます。前回のこのコーナーでも「作風や世界観は著作物か」ということが問題になりました。この問題は、生成AIの普及でより注目されることになりました。それこそ、生成AIを使えば誰でも簡単にイラストを生成できるのですから。
 
さて、今年の4月、文部科学省の中原文部科学戦略官は、衆議院内閣委員会で、生成AIを巡る著作権法違反の質問に対し、「著作権法は創作的な表現に至らない作風やアイデアを保護するものではない」、「単に作風やアイデアが類似しているのみなら、著作権侵害には当たらないとされる」、「AIで生成されたコンテンツに、既存の著作物との類似性や依拠性が認められれば、著作権侵害となり得る」等と答えました。文化庁は令和5年、令和6年と続けて「AIと著作権」をテーマにセミナーを開催していますが、中原文部科学戦略官の答弁は、現在の文化庁の見解に沿ったものといえます。
 
著作権法は、表現を保護しますがアイデアは保護しません。つまり、「アイデアの模倣」は著作権侵害にあたりません。しかし、既存の著作物との類似性や依拠性が認められれば、著作権侵害になり得ます。この考え方は、生成AIを利用してイラストを生成した場合でも、人が絵を描いた場合でも同じです。
著作権侵害(複製権又は翻案権侵害)の判断では、類似性と依拠性がポイントです。類似性とは、「既存の著作物と表現上の本質的な特徴が似ていること(創作的な表現が共通していること)」です。依拠性とは、「既存の著作物を基にすること」です。既存の著作物との類似性がなければ、著作権侵害になりません。類似性が認められた場合で、既存の著作物に依拠しているとき、著作権侵害になります。類似性と依拠性のいずれも充たすことが、著作権侵害の要件なのです。
 

生成AIを利用した場合でも、類似性+依拠性という著作権侵害の判断枠組みは変わりません。しかし、依拠性についてはAIならではの特徴があります。通常、既存の著作物を知らずに描いたイラストが偶然似てしまった場合は、依拠性は認められません。しかしながら、生成AI利用者が既存の著作物を知らなくとも、既存の著作物がAI学習に用いられていれば依拠性が認められ得るのです。実際の裁判では、AI利用者が既存の著作物に接する機会があり、かつ生成物に既存の著作物との高度な類似性が認められれば、依拠性が認められる可能性が高いでしょう。
生成AIの利用に関わらず、作風や世界観の模倣は、著作権侵害になりません。ただし、作風や世界観の模倣を越えて、具体的な作品と表現の類似性が認められる場合は、著作権侵害の可能性が生じます。例えば、生成物が特定の宮崎アニメの背景とそっくりな場合は、著作権侵害の可能性があります。
 
ご質問のような生成AIのイラストを商業利用する場合は、権利制限規定(私的使用のための複製等)が適用されないので、まず既存の著作物と類似しないことが大切です。決して他人の著作物を入力したり、特定の作品名・キャラクター名を入力しないことを推奨します。その上で、生成物が既存の著作物と類似していないか、画像検索等を用いてチェックすると良いでしょう。

 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。