個人利用に限ればデザインをコピーしていい?
まず、著作権の視点だけでこの問題を考えてみましょう。
著作権法第30条には「著作物は、個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下、私的使用)を目的とするときは、使用する者が複製することができる」と書かれています。
これが一般的に「個人使用ならコピーしてもOKだよね」という認識として広まっています。
著作権法がなぜ個人使用を認めているかというと、家庭内でテレビを録画して視聴したり、子供がドラえもんの絵を描いたり、学生が講演のメモをとったり、といった私的な使用全てで許可申請を必要とするならば、申請する利用者側も認可する著作権者も、その膨大な量を処理しきれないからです。
そこで個人的または家庭内の範囲内で「複製」や「翻訳」などをおこなう場合に限って合法と認めているのです。
ここで注意しなければならないのは、「使用する者が複製することができる」という点です。
すなわち、個人が自分で家庭内で着るポケモンのTシャツを作るのは問題ありませんが、それを業者が対価を受け取ってオリジナルグッズを作る場合は著作権侵害にあたる恐れがあります。
また、著作権ではなく商標権や意匠権、肖像権など他の知的財産権の視点で見た場合、このような注文を受けるのは明らかにNGです。
例えば、お客本人が「個人的に着るだけ」と言って、ルイ・ヴィトン(以下、LV)のロゴマーク入りTシャツを無許可でウエアプリント業者に注文するとしましょう。
例え1枚であれ、このようなTシャツが世に出ればLVの正規の商品であるという誤認を消費者に与えてしまう恐れがあります。
アイドルの応援グッズはなぜ訴えられないのか
しかもそのお客が「個人的に着るだけ」と言ってもその保証はなく、ネットオークションで転売する可能性や、別の業者に同様の発注を繰り返す方法で量産することも可能です。
そういった恐れを考えれば、このような仕事は極めてリスクが高いと言えます。もし発覚して裁判で争うようなことになれば、グッズを作ったり、プリントを請け負った業者も責任を問われる可能性があります。
同じく、雑誌から切り抜いたアイドル歌手の顔写真をTシャツにプリントしたりオリジナルグッズを作るという注文もNGです。
歌手本人や所属事務所の許可を得ていなければ、例え1枚だけの個人使用といえど肖像権(財産権)の侵害にあたります。
有名人の肖像や画像には財産的価値があり、それは保護されるべき(無断で使ってはいけない)というのが一般的な考え方です。また、雑誌や写真集の切り抜きの場合はカメラマンや出版社の著作権にも抵触します。
現実には、アイドルグループのライブ会場に行けばファンお手製の推しTや名前入りのうちわといった応援グッズが溢れていますが、これは所属事務所側がファンの行為を黙認しているだけで、知的財産権を侵害していないわけではありません。
業者がビジネスとしてそれらを販売すれば訴えられる可能性が高いでしょう。
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