損害賠償から懲役まである? それやっちゃダメな事例【前編】

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それやっちゃダメ
これまで知的財産権について学んできましたが、実際に注文する時、商品をつくる時になると「これはやめたほうがいいのかな?」、「断った方が良いのかな?」と不安に思うはずです。

そこでこの回では、実際にあった例や想定される「知的財産権問題」に絡んだ事例を解説していきます。

事例その1:お客が持ち込んだデザインなら店側に責任はないよね? どう見てもミッキーマウスのパクリなんだけど、うちは言われるままプリントしただけの善意の第三者なんだから。

やっちゃだめ! 社会通念上、周知の商標は店の責任も問われる可能性あり

キャラクターの絵柄、ブランドのロゴなどを勝手にTシャツにプリントして販売するのはNGですが、ではお客さんが自分で作ったデータにそれらが含まれていた場合はどうなるのでしょうか?

店側はデータをガーメントプリンターで出力しただけ。それでも店に法的責任があるのでしょうか?

結論から言えば、店側の責任が問われる可能性は少なくありません。

ミッキーマウスやシャネルなど、世間で広く認知されているキャラクターや商標であれば店側が「知らなかった」「客が勝手にやった」では済みません。

店はそれをプリントすることによって利益を得ており、それは本来ディズニーやシャネルが受け取るべき利益である(あるいは彼らの利益を毀損する)ことを忘れてはいけません。

ただし、近年は、ゆるキャラや萌えキャラなどのキャラクター、アパレルなどのブランドロゴが氾濫しすぎて、客の持ち込みデザインがオリジナルかどうかを店側がチェックしきれない状況になっています。

そのため、オリジナルグッズ製造や注文する立場の方々は、世間の流行にアンテナを張って流行のアニメや売れ筋のブランドはチェックしておきましょう。

世間一般の範囲内で知られていないレベルのキャラや商標なら、後で訴えられても故意や悪意がなかった「善意の第三者」と判断されるでしょう。

加えて、持ち込みデザインのお客からは「この原稿は他者の著作権、肖像権、商標権などを侵害するものではなく、万が一、後で他者から訴えられるようなことがあっても店側に責任はない」という承諾を得ておきましょう。

堅苦しいように思われますが、あらかじめ注文書類の中に、そうした一文を入れておけば良いでしょう。

事例その2:急ぎの注文に対応するために、近所のユニクロで無地の白Tシャツを買ってガーメントプリンターで印刷した。お客にユニクロ製とは言わず、材料として仕入れただけだから構わないでしょ?

やっちゃだめ! 商標権、意匠権などの侵害に問われる可能性がある

販売時にブランド名を謳わなければ偽造ではない、お客を騙そうとしたわけではないんだし……と思うでしょうが、ブランド商品に加工を加えること自体が商標権や意匠権の侵害となる可能性が高いと言えます。

ブランド側は定価で商品が売れるのだからそれでいいではないか、という言い分は通りません。

貴店が印刷した絵柄のTシャツが正規のユニクロ商品であるかのような誤認を消費者に与える恐れがあるからです。

また、ユニクロの無地の白Tシャツは無地であること自体がデザインであり、それに他者が勝手に手を加えるのは偽造なのです。

実際にユニクロの商品に加工した商品が販売差し止めになった事例もあります。

ウエアプリントビジネスでは、加工を前提に販売されている「プリンタブル」のボディを使うのがセオリーです。

フォントを使ったロゴ

事例その3:飲食店のユニフォームをデザインしたら注文者がその絵柄を気に入って「店のロゴとして買い取りたい」。市販のフォントをそのまま使ってるけどロイヤリティフリーだからいいよね?

やっちゃだめ! 基本的には二次使用にあたるフォントメーカーごとに個別対応

Tシャツや名刺、看板、サインなどのオリジナルグッズを市販のフォントでデザインするのは日常でよくあることです。

では、「そうやって作ったデザインを会社のロゴマークとして販売する」のは、フォントの使用許諾の範囲なのか、あるいは「二次的利用」にあたり追加料金をフォントメーカーに払わなければいけないのでしょうか?

結論から言うと、「フォントメーカーによって対応が異なるので個別に問い合わせるしかない」です。

最大手のモリサワは、「社名、ブランド名、商品名を表すロゴ、マーク等を作成するのは問題ないが、デザイン、意匠を含めた商標として登録することは不可」としている。一方、他のほとんどのメーカーはフォント料金とは別に使用許諾料金を設定しており、お金を払えば商標、商号登録も相談に乗るそうです。

そう聞いて、「パッケージで売られているフォントや画像素材集はロイヤリティフリー、つまり買った後は何をやってもいいんじゃないの?」という反論もあるでしょう。

しかし、それはそれぞれに限定された用途に応じた使用料を支払っているだけで、何をやってもいい権利を買ったわけではありません。

低解像度用と高解像度用フォントの値段が違うことを思い出してください。

著作権や版権などは製作者やメーカーが有しており、フォントを使った商標や企業ロゴを作って商売するなら別途の契約が必要となります。

写真画像やイラストなどの素材集も同様です。「ロイヤリティフリー」と謳われた物を購入しても、WEBや印刷物などパッケージごとで定められた用途以外に使う場合は別途費用が発生するケースが多いようです。

例えば写真画像をWEBデザインに使うのは良くても、大量のスマホカバーやTシャツ、缶バッジなどを作って販売する場合は使用許諾の範囲を超えると判断されるでしょう。

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記者プロフィール

記者1号
記者1号
ハンコとスタンプの専門雑誌「現代印章」と、オリジナルグッズを作る業者向け専門誌「OGBSマガジン」の記者。日本全国どこでも現れる。オリジナルグッズを作りたいと考えている人に役立つ知識を紹介するため、日々邁進中。趣味は寺社・仏閣めぐり。