クッキーにパン、せんべい…食品に印刷するとき、資格や免許は必要?

関口慶太関口慶太
クッキーに印刷したイメージ写真

クッキーに印刷したイメージ写真

Q フードプリンターでクッキーに印刷。食品に関する資格や免許はいるの?

 
フードプリンター(可食インクで食品に印刷するプリンター)を使ってクッキーに企業名やロゴを入れて販売している業者があります。当社でもフードプリンターを導入し、同じことをやりたいと考えています。
 
そこで、市販のクッキーを仕入れてプリントして販売するために、何か免許や資格がなければ違法でしょうか。なお、当社は普通の印刷業者なので、社内には調理師も食品衛生に関する資格者もいません。
 

保健所のイメージ写真

保健所のイメージ写真

A 食品衛生に関する知識や営業許可が必要。各地の保健所に相談を

 
フードプリンターは、各種イベントやお祝い事の際に贈る記念品の製作に利用されています。食品に写真を印刷することもできるようですから、結婚式の引出物にも喜ばれるでしょう。
 
ですが、食品を扱う以上、食中毒などのリスクもあります。食品衛生法に違反した業者は、罰則を受けるのみならず、その名称を公表されることもあります(食品衛生法63条等)。そこで本稿では、まず食品衛生法の観点から回答いたしましょう。
 
貴社が食品を販売する場合、貴社が食品を製造するか否かに関わらず「保健所の営業許可または保健所に対する届出のいずれかが必要である」と考えるべきです(結果的に不要という場合もあります)。
食品を製造・販売するということは、食中毒などのリスクを伴います。そのため、食品を販売するためには食品衛生に関する知識と設備の設置が求められます。貴社が小規模であったとしても、製造・販売する食品の種類に応じた保健所の営業許可が必要になる可能性があります。
 
保健所から営業許可を受けるには、人的要件と設備要件を充たす必要があります。
人的要件は、営業許可を受ける施設ごとに1名以上の食品衛生責任者を置かなければならないという要件です。設備要件は、1:自動販売機以外のすべての業種に必要な施設の基準を充たすこと、2:業種ごとに定められた特定基準を充たすこととなります。
 
貴社が「食品を製造しません。食品を仕入れて販売したいだけです」と考えていた場合はどうでしょうか。
食品を仕入れて販売する場合であっても、やはり食中毒などのリスクが伴うことに変わりはありません。ですから、営業許可が必要になる可能性があります。
例えば、仕入れたお弁当をそのまま販売する場合は、食料品等販売業の営業許可が必要になります。仕入れたお弁当を温めて販売する場合は、飲食店営業の営業許可が必要になる場合があります(東京都福祉保健局健康安全部食品監視課のHPの例を参照)。
 
営業許可は食品衛生法に基づくものと各地域の条例に基づくものがあり、複雑です。営業許可を行うのは各地の保健所ですから、必ず各地域の条例にも通じた保健所に相談しましょう。
 

マカロンのイメージ写真

マカロンのイメージ写真

ところで、ある著作物(絵)を無断で食品に印刷して販売することは違法でしょうか。紙への印刷と違って、食品は食べて無くなってしまうという理由で、著作物を印刷しても問題ないでしょうか。
 
著作権法上、複製とは「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」をいいます(著作権法2条1項15号)。たしかに、食品に印刷した場合は、紙に印刷した場合と比べて物の持続性はありません。しかし、複製の定義に照らせば、著作権侵害はないとは言えませんね。とすると、複製権および譲渡権の侵害の可能性があります。
なお、著作権法は例外的な場合に、著作権者に許諾を得ることなく著作物を利用できることを定めています(著作権法30条~第47条の8)。例えば、「私的使用のための複製」がその例外にあたります(著作権法30条)。
 
ですから、ある人が家庭内で楽しむためにフードプリンターを使用して絵を食品に印刷することは合法です。
しかし、それを販売することはもはや私的使用のための複製とは言えません。また、お客から「自分が家で楽しむために印刷して」と頼まれて印刷した場合、たとえそのお客が食品を販売しなかったとしても、私的使用のための複製の要件に該当しないことに注意しましょう。

記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻と2歳の息子と3人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。