自社のネットショップの名前を知らない会社に真似された。対処法を教えて!

関口慶太関口慶太

Q うちの社名を真似た通販サイトがあるがどうすればいい? 同じ商号はOKなの?

商号について教えてください。
会社を設立したり、サービスを提供する時に、既にある商号を真似て良いのですか? 私は、大阪市内に本社の登記のあるネットショップを経営していますが、この度お客様から『同じ名前のサイトがある』と教えていただきました。確認したところ、ネット上に私の会社と名前も本店所在地も同じ表示のネットショップがありました。これは詐欺だと思いますが、どのように対処すれば良いのでしょうか。
 
ところで、商号の独占権は商号登記を行った市区町村の範囲内だけのはずですから、今後、同じような被害を防ぐためにどのように対応すれば良いのでしょうか。
 

A 会社名を商品・サービス名として使用する可能性がある場合は、商号を商標登録しておこう

当事務所にも、よく似た相談が寄せられます。ご相談のようなケースは、ネット通販詐欺の典型例です。「住所表示が番地やビル名まで記載されていないサイトは怪しい」という情報が広まったせいか、他社になりすまして詐欺をおこなおうというものです。
 
購入客から「指定の口座に振り込みましたが、商品が届きません」という連絡が貴社にあった場合は、振込詐欺の可能性が高いことを相手に告げると共に、警察へ被害届を出すこと、振込先金融機関に報告することをお伝えください。いわゆる振り込め詐欺救済法の適用により、購入客の被害が回復する可能性があります。そして、貴社のホームページに「弊社のサービス・社名・所在地又は会社概要等を利用して、弊社運営と誤認させるようなウェブサイトを確認しております」と記載する等して、被害者が広がらないよう努めてください。
 
ところで、商号と商標を混同している相談も散見されますので、少し整理してご説明します。
商号と商標は別物です。商標とは、事業者が自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマークです。商標権の効力は日本全国に及びます。
 
これに対し商号とは、会社の名前です(会社法6条)。商号の選定は自由であることが原則ですが(商法11条)、既にある会社と商号及び本店の所在場所を同一とする内容の設立登記はできません(商業登記法第27条)。
実は、「A株式会社」と「株式会社A」は、とても似ていますが、同一の商号には当たりませんので、商業登記法の制限は受けません。他方、表記が同じ場合(例えば、『株式会社関口』)は、読み方が違うとき(『せきぐち』と『かんぐち』)であっても、同一商号とみなされます。
 
なおご質問のとおり、かつて商号は同一の市区町村内で同一・類似のものの登記が制限されていました。これを、商号の独占とも類似商号規制とも呼ばれていました。しかし、現在では同一の市区町村内で同一・類似の商号を登記することも可能となりました。よくある勘違いなので、この点をご注意ください。
以上のように考えると、同じ商号の会社を設立することができるのですから、既にある商号を真似て会社を設立することもできます。
 

とはいえ、他社の信用を利用して不正な商売をすることは許されません。会社法は、「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と定め、侵害の停止又は予防を請求することができる権利を定めています(8条)。また、広く知られた商号は、不正競争防止法でも保護の対象となります(不正競争防止法3条ほか)。
 
とはいえ、会社法や不正競争防止法の保護だけでは心もとない場合があります。例えば、自社の商号が、他社の商品やサービス名として使用されてしまった場合はいかがでしょうか。この場合、会社法・不正競争防止法違反には当然なりません。商号を商標登録し、商標権侵害を訴える必要があります。
 
ご相談のような被害を防ぐためにも、会社名を商品・サービス名としても使用する可能性がある場合や、会社名が商品・サービス名を連想させる場合は、商号を商標登録することをお勧めします。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。