建築物の写真を撮って商業利用するのは著作権侵害?

関口慶太関口慶太

Q 世界遺産のお城や神社をプリントしたいけど、建築物に著作権はあるの?

 
当社では、世界遺産の建築物(例えば姫路城、厳島神社など)や風景を撮影して、その写真を利用したオリジナルハガキを販売しています。
ところが、『平等院鳳凰堂を無断撮影した写真でジグソーパズルを作製して販売した玩具会社に、平等院が販売停止と在庫破棄を求めて裁判所に訴えた』というニュースを読みました(朝日新聞デジタル・2019年4月24日)。
 
建築物の写真を撮影して商業利用することは、著作権侵害なのですか。また、世界遺産のような有名な風景であれば被写体が被ることもあると思います。同じ風景を写真撮影することは、著作権侵害にあたるのでしょうか……?
 

A 同じ風景の写真撮影でも「著作権侵害」ではない。争点は「一般不法行為」にあたるか

ご質問にあるニュース、話題になりましたね。ただ、平等院鳳凰堂事件の具体的な事情は分かりませんので、事件を離れた一般論としてお答えします。
 
まず、そもそも建築物は著作物なのでしょうか。著作権法10条1項5号には「建築の著作物」が挙げられています。しかし、全ての建築物が著作物と認められるわけではありません。
 
著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(法2条1項1号)ですから、建造物によって思想又は感情を創作的に表現したものでなければ、「建築の著作物」とは言えません。
例えば、多くの神社仏閣、教会、城郭には著作物性が認められると考えられます。ただし、歴史的建造物は著作権の保護期間が切れていると考えられます。ですから、実際に著作権侵害の問題が起こるのは、近年の建築物となるでしょう。
 
では、保護期間を考えないとした場合、建築物の著作物を写真撮影することは著作権侵害になるのでしょうか。
 
著作権法は、例外的に著作権者等に許諾を得ることなく自由に著作物を利用できる場合があることを定めています(法第30条~第47条の8)。そして、建築の著作物を「次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」として、「建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合」を規定しています(法46条)。これは、建築物の複製模倣とその譲渡以外は利用が禁止されていないことを意味します。
 
したがって、建築物を無断で写真撮影したり、インターネットやテレビで放送しても著作権侵害にはあたりません。建築物の写真を撮影することが著作権侵害にならない以上、その写真を利用して商品を開発することも著作権侵害になりません。
 
ただし、以上の回答は著作権法に限ったものです。それ以外の一般不法行為(民法709条)にあたる可能性がないというものではありません。
平等院鳳凰堂事件では、原告は「平等院は、境内で撮影した写真の営利目的使用を禁じており、拝観者向けのパンフレットにも明記している」と主張しているようですから、玩具会社側がパンフレットの記載に同意していたか否かが争点になるのかも知れません。いずれにしても、裁判の経過が待たれます。
 

次に、2つ目のご質問についてお答えします。
 
結論から申し上げますと、被写体が同じ風景の写真を撮影したとしても、その写真が常に著作権侵害になるとは言えません。
写真は、著作権法10条1項5号に「写真の著作物」として保護されています。ですから、プロ・アマを問わず人が撮影した風景写真は著作物であると言えます。
 
しかし、被写体の選択自体は、アイデアであって表現そのものではありません。ですから、被写体が被ったこと自体は著作権侵害にあたりません。
裁判例は、写真の著作権侵害を判断するにあたり、「撮影者が意図的に被写体を配置したり、撮影対象物を自ら付加したものでない限り、撮影対象自体をもって表現上の本質的な特徴があるとすることはできない」としています。
そして「撮影時季、撮影角度、色合い、画角などの表現手法に表現上の本質的な特徴がある」として、著作権侵害を検討しているのです。

記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻と2歳の息子と3人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。