広告の「キャッチコピー」に著作権はある?

関口慶太関口慶太

Q 「そうだ、○○に行こう」なんてキャッチコピーに著作権はあるの?

このたび、弊社で新商品を発売するにあたり、電車に中吊り広告を打とうと考えています。
ところが、全く被らないキャッチコピーを考えるのは難しいと気づきました。広告のキャッチコピーはありふれた表現が多く、例えば「そうだ、○○へ行こう」なんて、日常誰でも口にしますよね? そもそも、キャッチコピーに著作権はあるのですか。
 

A ポイントは「創作性があるかどうか」

広告を打つ際、多くの企業は相当な費用と労力をかけてキャッチコピー(キャッチフレーズともいいます)を決定します。コピーライターは、商品やサービスの魅力を伝えるため、日々懸命に頭を悩ませています。しかし、そうして生み出されたキャッチコピーが、簡潔でありふれた表現に落ち着くことは珍しくありません。冗長で難解なキャッチコピーは、キャッチコピーとはいえないからです。では、キャッチコピーは著作物なのでしょうか。
 

著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(著作権法2条1項1号)。この定義から、著作物というためには、創作性が必要であることがわかります。
 

創作性の要件は「作者の何らかの個性が表現されていれば良い」と比較的緩やかに考えられています。つまり「一見して作者が特定できるような高い独創性や芸術性がなければ創作性は認められない」ということはありません。
とはいえ、創作性が必要とされている以上、他人の著作物の模倣品には創作性は認められません。どれだけ模倣が難しくても、模倣品には模倣者の個性が表現されていないからです。
 

また、短文やありふれた表現についても、創作性が否定されることがあります。表現の目的の性質上、表現の方法が不可避的に決まってしまう表現についても、創作が否定されることがあります。
 

たとえば、「ふじ久(筆者の祖父母の飲食店の名前です)のラーメン、安くて美味しくて最高! 一度は食べにおいで!」というキャッチコピーがあったとしましょう。このようなキャッチコピーには、およそ創作性は認められません。「最高」「安くて美味しい」「食べにおいで」という表現はありふれている上、飲食店の宣伝という目的に照らして不可避的な表現ともいえるからです。
もし、このようなキャッチコピーにまで著作権を認めてしまうと、自由な創作活動を阻害する結果になります。
 


 

知財高裁は、広告のキャッチフレーズについて、次のように判示して争いとなったキャッチフレーズの著作物性を否定しました。大切な裁判例なので、ご紹介します(傍線部は筆者)。
 

「特に、広告におけるキャッチフレーズのように、商品や業務等を的確に宣伝することが大前提となる上、紙面、画面の制約等から簡潔な表現が求められ、必然的に字数制限を伴う場合は、そのような大前提や制限がない場合と比較すると、一般的に、個性の表れと評価できる部分の分量は少なくなるし、その表現の幅は小さなものとならざるを得ない。さらに、その具体的な字数制限が、控訴人キャッチフレーズ2のように、20字前後であれば、その表現の幅はかなり小さなものとなる。そして、アイデアや事実を保護する必要性がないことからすると、他の表現の選択肢が残されているからといって、常に創作性が肯定されるべきではない。すなわち、キャッチフレーズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては、個性の有無を問題にするとしても、他の表現の選択肢がそれほど多くなく、個性が表れる余地が小さい場合には、創作性が否定される場合があるというべきである」(知財高裁平成27年11月10日)。
 

知財高裁が「キャッチフレーズの創作性は常に否定される」とは判示していないことに注意が必要です。単に「キャッチコピーには著作物性がない」と理解することは危険です。創作性の要件は、具体的な事案に応じてケースバイケースで判断せざるをえません。
 

迷った場合は、著作権法や不正競争防止法に詳しい弁護士に相談すると良いでしょう。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻と2歳の息子と3人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。