「鬼滅」でおなじみの市松模様でオリジナルグッズを作るのは違法?

関口慶太関口慶太

Q 「鬼滅の刃」の便乗グッズ問題。緑と黒の市松模様だけでも訴えられる?

「鬼滅の刃」が大流行しています。オリジナルグッズ業界でも鬼滅グッズが花盛りです。中には、「鬼滅の刃」とハッキリ謳わず、緑と黒の市松模様のマスクや「滅」と印字されたTシャツなど公式グッズではないと思われる商品もたくさんあります。
市松模様は日本の伝統文様ですから著作権侵害にならないとは思いますが、今や「緑と黒の市松模様=鬼滅」は常識だと思います。このように、ハッキリ作品名を謳わずに、色やデザイン(例えば市松模様)から「鬼滅の刃」を連想させて売るような行為は違法ではありませんか。
 

A 伝統の格子文様であることから、著作物とは判断されにくい

「鬼滅の刃」、私は本誌1話掲載時から追いかけていたファンです。本日(令和2年12月4日)最終巻が発売されましたので、さっそく購入しました。
さて、「鬼滅の刃」の人気は凄いものがあります。単行本部数、映画興行収入が圧倒的なことに加え、そのコラボ企画の多さが際立っているように思えます。ダイドードリンコ(株)のコラボ缶コーヒーが販売計画を約1500万本上乗せするなど、コラボ企画の成功がニュースになりました。
 
しかし、そうなると増えるのが権利者にキャラクターや商標の使用料等を支払わない『無断便乗商品』です。このような便乗商品は違法でしょうか。
 
まず、キャラクターを無断使用する場合はどうでしょうか。キャラクターが具体的に描写されたビジュアルは「著作物」です。これを無断利用すると、著作権(複製権)の侵害になります。例え漫画の絵をコピーしたものでなくても、その表現上の本質的な特徴から、誰が見てもその漫画の登場人物が表現されていると分かるようなものであれば、複製権の侵害となりえます。ですから、漫画の絵をコピーしたり、模写したキャラクターを無断で使用することは著作権侵害になりえます。
 

 
次に、ロゴマーク(ロゴ)を無断で使用する場合はどうでしょうか。この点、「鬼滅の刃」のロゴは、標準文字のものも含め、㈱集英社により商標登録されています(第6260437号ほか)。したがいまして、鬼滅の刃のロゴを無断で使用することは、商標権侵害になる可能性が非常に高いと言えます。
ちなみに、鬼滅の刃の文字を少し変えて、「鬼滅の刀」とした場合はどうでしょうか。「同一の商標でなければ商標権侵害にならない」ということはなく、誤認混同のおそれのある類似した商標であっても商標権侵害は成立します。したがって、「鬼滅の刀」は類似商標として違法になる可能性が十分あります。
 
では、緑と黒の市松模様のように、キャラクターをイメージした配色や柄の利用は著作権侵害にあたるでしょうか。この点、配色は基本的に著作物に該当しないため、キャラクターのイメージカラーを利用すること自体は著作権侵害に当たりません。
 
例えば、ドラゴンボールの孫悟空を連想させるオレンジ・青・黒の配色のグッズを販売したとしても、直ちに著作権侵害になるとは言えません。ましてや、市松模様は伝統の格子文様ですから、これを緑と黒で配色したものを著作物というのは難しいでしょう。配色から作品を連想させる程度では著作権侵害になりません。
 
ただし、商標法上、服やバッグに使用される柄の商標登録が認められています。例えば、ルイ・ヴィトンのダミエ格子柄、バーバリーのチェック柄が有名です。そして、令和2年6月、㈱集英社は、緑と黒の市松模様の柄を商標出願しました(商願2020-78058)。現時点では審査待ちの状態ですが、もしこの商標が商標登録されることになれば、緑と黒の市松模様の服を販売した場合、商標権侵害に問われる可能性があります。この問題は「バーバリーチェック柄の服を無断で販売したら違法になる」と言えばイメージしやすいでしょう。
 
個人的には、自他識別力の観点から商標登録は難しいのではないかなと思いますが、特許庁の判断が待たれますね。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻と2歳の息子と3人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。