ロイヤリティフリーの写真を加工してグッズを作るのは著作権法的にアウト?

関口慶太関口慶太

Q 3つの写真問題。勝手にモノクロ、社員が撮った写真、人が写り込んだ写真。

当社ではロイヤリティフリーの写真を単色に加工して印刷したTシャツを販売していますが、お客から著作権法違反ではないかと質問されました。ロイヤリティフリーだから色を変えても問題ないと思うのですが、違法になることはありますか?
 
当社では他にも、社員から募集した写真を商品に使うことがあります。弊社の社員が撮影した写真ですから、特に社員と契約せずに利用しても問題ないですよね? また、商品に利用したい写真に人物が写っている場合は、必ず人物を消さないと肖像権侵害になりますか?
 

A ロイヤリティフリーは「フリー」ではない。著作権侵害に該当していないか、利用規約の確認を

写真は身近な著作物です。例えば私が携帯カメラで撮影した子供の写真も、私の著作物です。しかし、商業利用に耐えうるレベルの写真が欲しいと思えば、かなりのコストを払う必要がありました。ところが、現在は検索サイトで「ロイヤリティフリー」と検索すると、商業利用に耐えうるレベルの無数の写真を容易に探すことができます。
 
今回の質問は次の3つの論点に分けて答えます。
1、ロイヤリティフリーの写真を勝手に加工してよいか?
2、社員の写真なら会社は無条件で使えるか?
3、商品に使う写真に人物が写り込んでいたらどうするか?
 
まず1について。そもそもロイヤリティフリーとは、著作者が利用者に対して著作権の限定的な放棄や利用許諾を認めるものであって「対価なしに著作物に対するあらゆる著作権が放棄されたもの」ではありません。通常はロイヤリティフリーを謳う写真にも利用規約が定められています。文字通りの「フリー」ではありません。
 
利用者は利用規約に同意して著作物を利用したものとされますので、利用規約に違反した場合は、著作権侵害になりえます(著作権法113条1項2号)。ご相談のケースでは、色を変更することは著作物の変更・改変にあたりますので、これが認められているか利用規約を確認する必要があります。
 
ところで、文化庁は『自由利用マーク』の普及活動を行っています。このマークは、著作者が著作物を幅広く利用してもらいたい場合に、その意思表示を容易にするため設けられたものです。
 
このマークには複数の種類があり、各マークが示す目的・方法の範囲内であれば、利用者は著作者に連絡したり、利用料を支払ったりせずにその著作物を利用できます。ただし、変更・改変・加工は禁じられており、商業利用も認められていません。つまり、こちらもロイヤリティフリーの場合と同様、何が許諾され・何が許諾されていないかを確認する必要があります。
 

 
次に2です。著作者は、原則として創作活動を行った個人です。ですから、社員が撮影した写真は、原則として社員の著作物となりますので、社員との合意がなければ会社は社員の写真を利用できません。
 
ただし、次の要件を充たす場合は、社員が撮影した写真であっても会社が著作者となります。①著作物をつくる「企画」を立てるのが法人であること、②法人の「業務に従事する者」が創作すること、③「職務上」の行為として創作されること、④「法人の名義」で公表されること、⑤「契約や就業規則」に「職員を著作者とする」という定めがないこと、です。例えば社員が個人的に撮影していた写真を募る場合は、職務上の行為として創作された写真とは言えませんので注意が必要です。
 
3については、肖像権とは「自己の肖像を他人にみだりに使われない権利」をいいます。これはどなたでも持っている権利です。ですから、他人の肖像が写っている写真を断りなく商業利用すると、肖像権侵害にあたる場合があります(ただし裁判所は「人の肖像が写真に写れば肖像権侵害にあたる」という単純な判断をしていません)。もっとも、肖像権侵害になるのは被写体の人物が特定できることが前提です。ですから、人が写っているからと言って人物を特定できないような写真は肖像権侵害になりえません。
 
また、仮に人物が特定できるような写真でも、色を加工するなどして人物を特定できないようすれば、肖像権侵害には当たりません。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。