コロナ関連グッズ。オリジナルのワクチン接種済みバッジを販売してもいいの?

関口慶太関口慶太

Q 「ワクチン接種済みバッジ」を民間業者が勝手に作るのはOKですか?

弊社ではTシャツやステッカー、缶バッジ等、注文に応じたオリジナルグッズを販売しています。
 
昨年から新型コロナウイルスに関連するグッズの注文が増えました。そんな中、「ワクチン接種済みバッジ」を作りたいという問い合わせがあります。花粉症患者がくしゃみや咳をしても周囲を不安にさせないための「花粉症バッジ」が世間的にヒットしましたが、「ワクチン接種済みバッジ」は重みが違うように思えます。
「ワクチン接種済みバッジ」のような商品を、民間の事業者が販売して問題ないでしょうか?
 

A 悪用される恐れがあるので、取り扱いに注意が必要。公的な証明と誤認されかねないよう、デザインも配慮すること

海外で新型コロナワクチン接種済証を移動制限緩和に活用することが検討されているように、接種済証の重要性は増しています。偽の接種済証の流通(日本なら公文書偽造罪)が問題となっている国もあるようです。
 
日本では、現在、新型コロナワクチン接種を受けた後、接種を受けた日付・場所と接種したワクチンの情報が記載された接種済証が発行されます。接種済証はプラスチック製カードではありません。そのため、ある自治体では、高齢者が接種済証を紛失・破損しないよう、接種済証を貼れる厚紙とクリアファイルのセットを交付しています。接種済証の保管方法は自由ですから、接種済証を保管するためのオリジナルグッズを販売しても面白いかも知れません。
 
他方、今回ご質問いただいた商品には悪用の懸念があります。例えば、新型コロナワクチンを接種していない人がワクチン接種済みバッジを付け、マスクを外して外出するケースが考えられます。特に、あたかも公的な証明であるかのような誤認を与えかねないデザインのバッジが流通すれば、社会の混乱を招く恐れもあります。このような懸念から、少なくとも公的な証明と誤認されかねないようなデザインの商品はコンプライアンス上販売するべきではなく、ワクチン接種済みバッジの販売先は、新型コロナワクチン接種を行っている病院等に限るべきではないかと考えます。その上で、「ワクチン接種済みバッジ」が著作権法、商標法に反しないか否かを検討します。
 
まず、著作権法違反を検討します。「ワクチン接種済みバッジ」が著作権法違反に該当するか否かは、「ワクチン接種済み」の文言が著作物か否かを検討することになります。結論として、「ワクチン接種済み」の文言は単なる事実を示すものであって、思想又は感情を創作的に表現したものとは言えないため、著作物ではありません。したがって、「ワクチン接種済み」の文言をバッジに印字しても著作権法違反になりません。ただし、絵柄も含めデザイン全体をみた場合は、著作権法違反や不正競争防止法違反に該当する可能性があります。
 
次に商標法違反を検討します。商標権の効力は、商品や役務の普通名称には及ばないため、「ワクチン接種」の文字が商標権侵害に該当するリスクはまずないと考えられます。念のため「ワクチン」の商標を検索しましたが、商標権侵害になりそうな商標は確認できませんでした。
 

ところで、昨年来「ワクチン」を含んだ複数の商標が、標準文字で出願されています。その多くは、「自己と他人の商品・役務を区別することができない」という理由から、登録に至らないと予想されます。
 
では、仮に、単なる文字(標準文字)ではなく、公的な証明と誤認されかねないようなデザイン、例えば十字架を模したデザインで商標出願された場合はどうでしょうか。この場合は、公共機関の標章と紛らわしい等公益性に反する、という理由で登録は拒絶されるでしょう。また、有名な病院の商標を模したデザインの場合はどうでしょうか。この場合は、他人の登録商標又は周知・著名商標等と紛らわしいものであるという理由で登録は拒絶されるでしょう。つまり、「ワクチン接種済み」の文字だけでは商標権侵害にならない場合でも、デザイン全体で検討した場合は商標権侵害になる可能性があります。
 

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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。