歴史上の人物をモチーフにしてオリジナルのTシャツやスタンプを作るのは違法?

関口慶太関口慶太

Q 戦国武将や明治維新の志士など歴史上の人物の名前や写真を使ってOK?

弊社では、ハンコや表札の他、Tシャツやステッカーなどのオリジナルグッズを販売しています。図案はお客が用意するのがほとんどですが、歴史上の人物をモデルとした図案が結構あります。最近は大河ドラマの影響もあり、戦国武将だけでなく、幕末や明治時代の偉人の名前や顔写真をモチーフにした図案も増えています。
 
そこで、弊社が店頭に飾るハンコや表札のサンプルに歴史上の人物名を使ったり、彼らの顔写真を題材にしたイラストをTシャツにプリントして販売することについて、どのような問題があるか教えてください。
 

A 歴史上の人物の名前、写真の使用は原則、法に触れない。著作権、肖像権、商標権の側面から解説

今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」、好調のようですね。今後、明治時代に活躍した人物がより脚光を浴びるかもしれません。新撰組の土方歳三のように、教科書に載らない歴史上の人物であっても、日本ではドラマや小説を通じて馴染む機会が多く、歴史上の人物は様々な作品の題材になっています。それはドラマや小説に留まらず、マンガやイラスト、名前のみ利用する場合も見受けられます。
 
そこで、歴史上の人物の名前や顔や写真がどのように保護されているのか、著作権、肖像権、商標権の観点から考えてみます。なお、ここでは、歴史上の人物とは概ね「死後50年ほど経過した社会的に著名な人物」を想定しています。
 
まず、歴史上の人物の名前はどのように保護されているでしょうか。著作物とは、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」をいいます。歴史上の人物の名前に限らず、人物の名前は「思想または感情を創作的に表現したもの」に該当しないので、著作物ではありません。
 
では、商標権はどうでしょうか。商標とは、「事業者が、自己の取り扱う商品・サービスを他人のものと区別するために使用するマーク」をいいます。人物の名前は商品やサービスを区別するものではありませんから、商標ではありません。「伊達政宗」のように、飲食品の名称として名前が商標登録されるケースもありますが(商標登録番号第4770804号他)、それは商標登録がされた結果であって、人物の名前が当然に商標になるものではありません。
 
ちなみに、歴史上の人物の名前を商標登録することは不可能ではありませんが、ハードルは非常に高くなっています。たしかに、歴史上の人物の名前の独占的な使用は慎重でなければなりませんね。
 
以上のとおり、歴史上の人物の名前は原則として著作権とも商標権とも関係ありません。ハンコや表札のサンプルに歴史上の人物名を使うことは、原則問題ありません。
 

 

次に、歴史上の人物の顔や写真はどのように保護されているでしょうか。本人の肖像権はいかがでしょうか。肖像権は、裁判を通じて認められてきた権利で、概ね「自己の肖像をみだりに撮影されたり、使用公表されたりしないプライバシーを守る権利」と考えられています。肖像権は個人の人格的な権利と考えられているため、故人の肖像権は認められないという考えが有力です。(公社)日本俳優協会のように、第三者が故人の肖像権を管理しているケースも見受けられますが、これはパブリシティ権に着目した考えと思われます。
 
では、著作権はどうでしょうか。写真は著作物の典型例ですから、顔写真をプリントしたり、顔写真をベースにしたイラストを作成することは写真撮影者の著作権侵害に当たると言えそうです。しかし、著作権の保護期間は70年ですから、写真撮影者の死後70年以上経過している場合は、著作権侵害にはあたりません。
 
なお、写真の所有者(例えば、博物館)は写真の所有権を持っていますが、これは「物」としての写真を独占的排他的に使用できるという意味であって、所有者が当然に著作権を行使できるものではありません。
 
以上のとおり、歴史上の人物の顔や写真は、肖像権は原則として問題にならず、著作権侵害に該当しない場合が多いと考えられます。

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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。