人気マンガのタイトルをグッズ製作に使うのは法的にアウト?

関口慶太関口慶太

Q 人気マンガのタイトルでグッズを作りたい。文字だけなら問題ないでしょ?

当社では、各種オリジナルグッズ(クリアファイルなど)を製作して販売しています。そこで、人気アニメやコミックのタイトルだけを使ってグッズにして販売しようと検討していますが、問題ありませんか? 
 
例えば「怪獣8号」「ゆるキャン△」「ダンジョン飯」などです。キャラクターの絵柄は使わず、タイトルロゴのまま使うこともしませんので、著作権法には違反しないと思います。
 

A 商標登録されていないタイトルでも、不正競争防止法に違反する可能性あり

作品のタイトル(題号)が著作権法で保護される著作物であるためには、タイトルそのものが「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)という要件を充たす必要があります。
 
どんなに短いタイトルでも、作者は悩み抜いて決めるはずです。ところが、創作性が認められないという理由から、著作物性が認められるタイトルはほとんどないと考えられています。ロゴマークをそのまま使った場合であっても、ロゴマークが文字列のみで成立しているときは、やはり著作物性が認められる場合は稀と考えられます。ただし、「タイトルは常に著作物ではない」という理屈ではないので、一時期流行した長いタイトルには著作物性が認められる可能性があります。
 
しかし、著作権法に違反しないからタイトルを無断で商業利用して良い、とはいえません。まずは、商標権侵害の有無を検討する必要があります。
商標とは、事業者が自己の商品又は役務(サービス)について使用する標章(マーク)をいいます(商標法2条1項)。図案ではなく、文字列のタイトルのみを商標登録することもできます。
 
作品のタイトルが商標登録されているか否かは、Jプラットパット(特許庁)で検索すると分かります。そうすると、ご質問の「怪獣8号」(第6412185号ほか)、「ゆるキャン」(第6127178号ほか)、「ダンジョン飯」(第6475674号)のいずれも商標登録されていることが分かりました。このように、人気アニメやコミックのタイトルは、通常は各社が商標登録を済ませています。
 
その上で、さらに商標権侵害の可能性があるかを検討します。商標権侵害とは、「他者の商標をどのような態様でも使用すれば常に成立する」というものではありません。商標とは特定のサービスを識別するために登録されるものですから、例えマークが同じであっても、登録されているサービスが異なれば商標権侵害にならない可能性があるのです。すると、ご質問いただいた3つの商標のいずれも文具類(第16類)をサービスに選択して登録されていることが分かりました。このように、アニメやコミックのタイトルを商標登録する際は、通常はその作品の媒体のみをサービスに選択するのではなく、グッズ展開の可能性も見据えて、サービスの範囲を広めに登録することが一般的なのです。
 
結論として、ご質問のケースでは商標権侵害の可能性が高いと考えられます。
 

では仮に、商標登録されていないタイトルであれば問題ないのでしょうか。次に、不正競争防止法違反を検討する必要があります。
不正競争防止法は、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡……する行為」は「不正競争」に該当すると定めています(不正競争防止法2条1項2号)。これは、本来払うべき努力をせずに、他者の信用・名声・評判にフリーライドすることを防止するための規定です。
 
例えば、自社の商品に無断でタイトルを利用した場合、「自己の商品等表示」の要件は充たします。そして、「他人の著名な商品等表示」についても、人気アニメやコミックのタイトルであれば、「著名」の要件を充たすと考えられます。
 
とすると、商標権侵害にならないケースであっても、タイトルを使ってグッズ販売した場合は、不正競争防止法違反の可能性もあると考えられます。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。