年中同じ価格なのに「期間限定セール」と謳うのは違法でしょ?

関口慶太関口慶太

Q 年中「半額セール」をしているハンコ店。こういう安売りを訴えることはできる?

近所にハンコ店があります。うちも同業なので、時々価格をチェックするのですが、いつも「当店通常価格の50%オフ!」「期間限定セール半額ご奉仕!」と書かれたポップがあり、通常価格に×をつけた半値の値札が貼られています。
 
しかし通常価格というものの、実際に通常価格で売っているのを見たことがありません。1年中同じ値段だと思います。これは消費者を騙しているようで腹立たしいです。こういう輩を私が警察に告発できますか? 
 

A 景品表示法に抵触する可能性が高い。ポイントは「嘘や大げさな表現であるかどうか」

ご相談のケースは、景品表示法に違反する可能性が十分あります。景品表示法違反の疑いがある場合、消費者庁や公正取引委員会に対してだけではなく、都道府県に対しても、景品表示法違反の疑いの情報を提供することができます。情報提供の後、調査の結果、景品表示法違反が認められた場合、都道府県と消費者庁は違反した業者に措置命令(再発防止等を命じること)をおこないます。さらに、消費者庁は、課徴金の納付を命じることがあります。
 
景品表示法とは、不当な表示や不当な景品から消費者を保護するための法律です。実務上問題になりやすいのが、不当な表示です。景品表示法は、
 
①商品やサービスそのものの品質等について誤認させるような表現(優良誤認表示)
②商品やサービスの価格や取引条件について誤認させるような表現(有利誤認表示)
③その他誤認されるおそれがある表示
 
……を禁止しています。要するに、嘘や大げさな表現で消費者を騙したり誤解させたりする表示を禁じる法律なのです。「Aと表示されているが、実はaだった」はダメなのです。
 
値段(価格表示)は、商品やサービスの選択に重要な情報です。そこで国は、価格表示のガイドライン(法令ではない)を定めています。例えば、(1)実際の販売価格より安い価格を表示する場合、(2)実際には表示した期間を越えて割引を実施しているにもかかわらず、期間限定で割引を実施している旨を表示する場合、(3)販売価格が安いとの印象を与える表示を行っているが実際は安くない場合等は、景品表示法違反になる、といったことが定められています。
 
ご相談のように「期間限定」のセールを宣言しているにもかかわらず、実際は同一商品を同じ販売価格で売り続けるのは、景品表示法違反の典型例です。セール品の対象を明らかにしないまま「半額ご奉仕」と宣伝することも、実際は一部の商品だけが半額の場合に問題になります。
 

また、ご相談のケースではおそらく「当店通常価格8,000円の品をセール価格4,000円」のような値札が付いていると思います。このように事業者が販売価格としてセール価格を記載し、比較対照価格として通常価格を併記することを「二重価格表示」といいます。
 
正しく二重価格表示をおこなうためには、〈1〉同一の商品の価格を比較対照価格に用いること、〈2〉比較対照価格に用いる価格について実際と異なる表示やあいまいな表示をおこなわないこと、の要件を充たす必要があります。二重価格表示では、販売価格の安さを強調するために用いられた比較対照価格が適正かどうかを検討することが特に重要です。
 
二重価格表示には様々なバリエーションがありますが、次のような例を読んでイメージいただくことが良いかも知れません。
例えば、衣料品店の場合、
 
【1】「スーツ当店通常価格50,000円の品→40,000円」と表示しているが、実際には、当該商品と同一の商品を通常価格45,000円で販売している場合
【2】「コート当店通常価格15,000円→12,000円」と表示しているが、実際には当該商品は今回初めて販売されるものである場合
【3】「ネクタイメーカー希望小売価格10,000円の品→8,000円」と表示しているが、実際には当該商品は同店の自社ブランド商品である場合
 
……が違法な二重価格表示の典型例です。これらはいずれも「Aと表示されているが、実はaだった」というパターンにあてはまりますね。景品表示法は、消費者保護という目的から考えるとポイントを掴みやすい法律といえます。
 
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記者プロフィール

関口慶太
関口慶太
今井関口法律事務所 代表弁護士。1981年生まれ。群馬県出身。大阪大学法科大学院卒。企業法務に精通し特に知的財産権に関するエキスパート。妻、息子、娘と4人暮らし。「分かりやすくてためになる記事をご提供したいと思います。よろしくお願いいたします」。