平面なのに3D!?見る角度によって絵柄が変わる「レンチキュラー」の仕組みとは

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様々なレンチキュラー

販促品からグッズまで用途は様々

平面の印刷物なのに、アニメーションのように動いて見えたり、同じ平面上に異なる絵柄が現れたり、立体的で奥行きがあるように感じられたりと、見る角度によって見え方が変化する「レンチキュラ―」。

人の目を引く効果が期待できるためPOPやポスターなどの販促品や、オシャレな表現としてCDのジャケットや化粧品のパッケージなどに使われるなど、用途も様々です。

他にも、アニメのキャラクターをプリントしたポストカードや、博物館グッズとして販売されている定規などもあります。

そんなお馴染みのレンチキュラーですが、街中や店頭で目にすることはあっても、仕組みまでは知らないという人も多いのではないでしょうか。

そこで、ここのコラムでは、レンチキュラ―の種類と仕組みについて解説します。

レンチキュラーを使ったPOPやポストカード

レンチキュラーを使ったPOPやポストカードの一例。

人間の目の構造を利用したこの技術。実は50年以上も前から使われていた!

レンチキュラーの歴史は古く、日本での始まりは「ダッコちゃん」と言われています。

1960年に発売され、一大ブームを巻き起こしたビニール製人形です。

目の部分にレンチキュラーの技術が使われていて、見る角度でウインクしているように見えるという画期的な手法でした。このように50年以上前から使われてきた印刷技術ですが、具体的にどういう仕組みなのでしょうか?

レンチキュラ―の仕組み

レンチキュラーで加工した製品を拡大して見てみると、表面に微細なかまぼこ形の凸レンズ(レンチキュラーレンズ)がたくさん並んでいるのが確認できます。

そして、その下層の印刷面には細かく分断された複数の画像が交互に並んでいます。

この印刷面が表面のレンズ作用と視点の移動によって次々に部分拡大されるので、平面の印刷物でありながら、動いて見えたり立体的に見えたりといった変化が現れるのです。

こうした見え方をするのは、人間の目の構造が大きく関係しています。右目と左目が離れているため、左右の目に映る景色の見え方に微妙な差が出ます。両目の視差は距離が近い物ほど大きく、離れるほど小さくなる性質があり、このズレによって立体的な物として脳が認識するのです。

レンチキュラーで表現できる見え方6パターン

レンチキュラーと一口に言っても様々な見え方があり、一般的に次の6パターンに分類されます。

・チェンジング…1枚の画面上にいくつかの絵柄が切り替わって見えます。インパクトを与えたい、1枚では収まらない情報を分けて表示させたい場合などに効果的です。
チェンジング

・アニメーション…各絵柄がコマ送りのように動いて見えます。1枚につき10画像程度を使うとスムーズな動きが表現できます。
アニメーション

・モーフィング…絵柄が徐々に別の絵柄へと変形して見えます。2つの絵柄を用意し、切り替わる間の画像を生成処理して合成しています。
モーフィング

・ズーミング…写真やイラストの絵柄がだんだん大きくなったり小さくなったりする見え方です。モーフィングと同じ様に複数の画像を切り替えて表現しています。
ズーミング

・3Dデプス…平たい絵柄が複数の階層に分けて並べられたような遠近感、立体感を表現できます。テキストや模様などの3D表現に用いられることも多い手法です。
3Dデプス

・リアル3D…立体感がリアルに再現できる手法です。最も写実的でハイレベルなレンチキュラー3D効果となります。絵柄をじっくりと見せたい、現物でしか味わえない感動を印刷物に込めたい、という場合に最適です。
リアル3D

不思議な見え方のカラクリは、「かまぼこ形」レンズと細切れ合成画像にあった

レンチキュラーのレンズ

レンチキュラーレンズの全体と部分拡大写真。かまぼこの凸形がたくさん並んでシート状になっているのがわかる。


レンチキュラ―のレンズの拡大

見え方の違いは、レンチキュラーレンズの種類と印刷する絵柄の内容・枚数の組み合わせによって生み出されます。

複数の絵柄を細切れ状に混ぜて合成し、その合成された画像の上に、レンチキュラーレンズ(かまぼこの凸形がたくさん並んでシート状になっているもの)を貼り付けて作られます。

合成する絵柄の数が少なければ「チェンジング」、数を増やせば「アニメーション」になり、そのアニメーションがカメラを横方向に視点移動させたような絵柄で構成されていれば「3D」表現が可能となります。レンズの種類は、1インチ(約2.54㎝)幅に収まるかまぼこ形の本数(ライン数)によって、200L、100L、75Lなどに分類され、200Lが最もレンズ目が細かいものとなります。

近くで見るものには細かいレンズが使われ、3D効果を強く出したい場合には厚みのあるレンズが使われます。

絵柄を決める時に知っておきたい3つのコツ

みかんと馬が描かれたレンチキュラ―

こんなものを作りたい!と思っても、初めてレンチキュラーを作る場合や、以前と違った絵柄で作る場合には、想像通りに完成するのか不安ですよね。

そこで、使う絵柄を決める時(合成前の写真やイラストを選ぶ時)にどんなことに注意すればいいのか、ポイントをまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

・いくつかの絵柄が切り替わって見える「チェンジング」は、2~3種類の絵柄が最適です。絵柄の数を増やし過ぎると鮮明な切り替わり(変化)が損なわれるので注意。

また、極端に色の薄い(白ベースなどの)絵柄と濃い絵柄を組み合わせると、薄い絵柄側に濃い絵柄の残像が目立つことがあります。

・各絵柄がコマ送りのように動く「アニメーション」の場合、できるだけシンプルな動きで表現しましょう。複雑な動作は繋がって見えづらくなってしまいます。

・「3D」の表現をする時は、左右に多少余裕を持った絵柄(写真など)を用意しましょう。

レンチキュラーの取り扱い先によっては、サンプルを送ってもらえたり、試作品を作ってもらえる印刷業者もあります。製作を依頼する際に相談してみると安心です。

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記者プロフィール

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ハンコとスタンプの専門雑誌「現代印章」と、オリジナルグッズを作る業者向け専門誌「OGBSマガジン」の記者。日本全国どこでも現れる。オリジナルグッズを作りたいと考えている人に役立つ知識を紹介するため、日々邁進中。趣味は寺社・仏閣めぐり。