今年の10月4日は、凄く縁起のいい日だそうです。
どう凄いのかは知りませんが、天赦日と一粒万倍日という商売をするには願ったりな日が重なるそうです。そこでこの日に法人成りすることにしました。
理由は勿論、ガッポリ儲かりそうだから。ええ、安易です。でも決めたんです。なので大至急、法人印を作らねば間に合いません。
印鑑なんてどれも同じ。
ササッと作ろーっと、いつものごとくネットで[法人 印鑑]と検索すると、ハイ、出てくる出てくる。選びたい放題。
あちこちのサイトを見て[実印・銀行印・角印]の3本を作ればなんとかなりそうなことが理解できました。
目次
ヱビスビール1ダースより安い法人印?
でも、なんということでしょう。
相場観がわからないので、どんな材質で幾らぐらいのものを買えばいいか分からず、しかも見れば見るほど、店によって値段がピンキリなのです。
なんと3本セット4480円というものまで発見。
ヱビスビール1ダースより安い法人印鑑って、安かろう悪かろうなのか?
「いやいや、印鑑なんて捺せればいい」なのか?
素人には皆目見当もつきません。
「やばい、これは手強い買物になりそう」……額に嫌な汗が吹き出してきました。
なのでここは一度ネットから離れて実店舗に足を運び、相場感を体感してみよう!
そう、この感じ。結婚式の打ち合わせと同じね
近所の「開運印」みたいな看板を掲げる大きな印鑑屋さん、ココは入店に勇気が必要です。
何度も店の前を通り過ぎ店内をチェックするも客はおらず、社員らしきオジサマ数人が見えます。近場の立ち呑みで一杯引っ掛け、エイッと入店です。
ガラスケースを眺めながら、会社を法人成りにする旨を告げると、「そら、商売繁盛ですなぁ」と軽いジャブを打ってきました。
居並ぶ印鑑の最低価格は5万5000円程度。「安いものでも結構しますね」と尋ねると、
「これから商売を広げるんなら、最低でもこれぐらいは必要ですよ。あんまり安いと恥ずかしいですから」とアドバイスしてくれました。
なぜか唇の端に半笑いを浮かべながら。
ちょっとイラッとしながらも腰が引けたアタシに心の声が、(安いものしか興味がないってバカにされてるんちゃう?一発かまさんと!)と煽ってきます。
そーや、卑屈になる必要はないねん! 半笑いのオヤジに半笑いで呟いてみました。
「一番安くてとりあえず捺せたらいい印鑑か、一生ものなので材質や彫りにも凝った印鑑か、悩んでるんです」。
するとオヤジ、
「入って来るなり安い印鑑をって言われたんでご紹介してなかったけど、実は開運彫りの印鑑もあるんですよ」と意気揚々と語り出しました。
「これは有名な相撲取りの○○さん」「プロ野球選手の××さん」と、ドンドン有名人の印鑑を出してくるのです。するとこれが不思議。
一旦いいものを見るとそちらの方がよく見えて、開運印鑑などに興味のかけらもなかった私が、
「一番安いタイプの印鑑にこの開運彫りをしたらおいくら?」と尋ねだす始末。
ああ、そう。この感じ。結婚式の打ち合わせと同じね。
一生のことだからと、当初の予算よりもドレスや引き出物、テーブルのお花をどんどんランクアップさせてしまうゼクシーな女心。
嫁に行ってないからあくまでも想像やけど。
すると、さっきまで店の一番奥にいた最高責任者っぽいボスキャラオヤジが登場してきました。
ヤバイ!
逃げられなくなりそうな匂いがプンプンです。
このままだと勢いだけで18万円もする印鑑を買ってしまいそうです。
人に聞けば聞くほど深みにハマり
我に返って、見失った自分を取り戻すために「副社長と相談してからまた来ます」と逃げ帰りました。恐えー。相場が分からないモノってスゲー恐い。どっかに紹介されてないのか。法人印の恥ずかしくない相場価格ってのは。
これはもっとリサーチが必要やと、経営者の友人に急いで電話。
彼は契約を交わすことが多いらしく「あまり安いのだと印鑑を見られてバカにされる」と、あの印鑑屋と同じアドバイス。
「俺もチャンスがあったら作り直したいわ。最初からもう少しエエやつ作ったらよかった」と言うのです。
「今の印鑑でいくらぐらい?」
「たぶん7~8万かな」。
なんと! その金額の印鑑で笑われる世界って!
アタシは別に調印式みたいに契約書を交わすこともないので、印鑑を見て笑われることもないしなー。
じゃ、こんなアタシは一体どんな印鑑を買ったらええんやろう?
人に聞けば聞くほど深みにハマり、どうすればいいのかわからなくなってきました。嗚呼、誰か、アタシに適正な価格を教えて! どこかにないのか? そんな資料。
法人印鑑の平均金額調査みたいなもん。ついに手詰まり。本当に途方にくれてしまいました。
言われるがまま、おまかせで購入
その時、知り合いに印鑑屋さんがいたことを思い出しました。
以前、印影について熱く語っていた彼。
自分に印鑑なんて必要ないと思っていたのでちゃんと話を聞いたことがありませんでした。ゴメンなさい。
でもアタシの呑み仲間に悪い人はいないはず。
ぼられたり嘘つかれたりすることはないやろうと速攻で電話です。
で結局、その友人に言われるがまま、おまかせで購入決定!
お願いしたのは「実印、銀行印はめったに使わないので人に笑われない程度のもの」「角印は領収証によく捺すのでちょっといい材質で」の2点だけ。
ひと通りの情報はネットや実店舗で色々教えてもらったので、これでどうにか発注できるはずです。
その後詳細が届きました。
人様に笑われたらアカン……お墓と同じ強迫観念
材質は鹿児島産の本柘と黒水牛。サイズは実印が直径18ミリ寸胴、銀行印が一回り小さい直径16ミリ天丸、角印:21ミリ。実印と銀行印の形は間違えないためにあえて別の形にしてもらいました。
このサイズ選びがネットではよくわからなかったので提案してもらえて大助かり。書体の良し悪しもおまかせ。縁起系のものだそうです。
金額は総額7万5000円ほど。高いか安いかは正直わかりませんが、納得の購入です。
今回法人印を買うにあたり、多くのネットショップや実店舗を見て回り、友人から色々話を聞きましたが、やっぱり不明な相場観。
印鑑ってお墓やお葬式と一緒のジャンルやと痛感しました。
一生に一度のことで未体験、人様に笑われたらアカンという強迫観念。誰かにこれでいいのよ、一般的よと言って欲しい感モリモリな商材でした。
正直、銀行印なんて口座開設の時以外、使うことはないんじゃないかと思うほど。すると何ですか? 印鑑一押し2万1000円!? 恐ろしい世界です。