チタンは塩分や水につけても錆びることがなく、耐食性に優れた金属です。名前の由来はギリシャ神話の「TITAN(タイタン=巨人)」。その強度はアルミニウムの3倍で、鉄やステンレスを上回る。熱にも強く、溶解温度は1668℃と鉄よりも高いため、万一火災が起きても焼失しにくいと言われています。ジェット機や深海探査機、宇宙開発にも使用されるほど丈夫な素材なんです。
また、金属アレルギーを起こさないので、人工骨やペースメーカーなどの医療器具に使われることも多く、人に優しい金属といえるでしょう。そのため、メガネフレーム、時計、アクセサリーなど日常で身に付けるアイテムに利用されることが多いようです。
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チタンは粒子が超微細だから朱肉と相性がいい
印材としても優秀で、欠けにくく変形や歪みも無いので半永久的に使えます。近年、印面の彫刻技術が開発され、一般に広まりました。
また、チタンは粒子が超微細なので朱肉が均一に付着して、印肉の付き、肉離れが良く捺印性も優れています。独特の重量感、捺印感のチタンは象牙に代わるステータスのある印材として、男性エグゼクティブを中心に人気の印材。象牙や牛角は好みではないけれど、いいハンコが欲しいというニーズに応える新しい高級ハンコと言えます。
ゴルファーには「チタンは軽い」というイメージがあるようですが、クラブに使われるチタンは、その強度を活かして中空状になっているために鉄製よりも軽くなっています。ちなみに、印材は中まで詰まった「無垢材」なので、手にした時に適度な重みを感じます。一生物のハンコで、ここぞという時に捺す法人印、実印として使うとかっこいいかもしれません。
すでに印鑑の素材としてポピュラーになりつつあるチタンですが、テレビ番組でもその良さは何度も紹介されています。2020年3月24日OAのTBS系の人気バラエティ番組「印鑑の世界」の回でも取り上げられ、試し捺ししたマツコさんが「キレイに捺せる!」と褒めていましたね。同番組に出演した印鑑専門誌の編集長、真子茂さんもなぜチタンがキレイに捺せるかを詳しく解説していましたが、このコラムではチタンの見た目の違いや特徴について説明します。
チタン印には鏡のような仕上げとブラストチタンがある
チタン印には、表面がマットな「梨地仕上げ」と、艶のある「鏡面仕上げ」の2種類があります。「鏡面仕上げ」は文字通り、鏡のように周囲の風景を反射するほど磨き上げられたチタンのこと。下写真の通り、ツヤツヤの光沢があって、「鏡面仕上げ」のネーミングにも納得できます。
「梨地(なしじ)仕上げ」とは、表面にブラスト加工を施し、マットな質感に仕上げたチタン印のこと。「ブラストチタン」と呼ばれることもあり、人気があります。ツヤを抑え、金属の質感がわかりやすいですね。
チタンには電流で色をつけたカラーチタンもある!
チタンは純チタンとチタン合金の2種類に大別でき、印材には純チタンが使われることが多いようです。純チタンはステンレスより柔らかく複雑な印面彫刻に向いています。チタンの中にはカラフルな「カラーチタン」というものもありますが、カラーチタンの色は塗装ではなく、電流を流して表面の透明な膜の厚みを変えることで光の屈折率が変化し、色彩を表現しています。金箔などを貼ってコーティングするカラー化技法もあるようです。
チタン印の彫刻にはサンドブラストや特殊なレーザー彫刻機、チタン対応のスピンドル彫刻機などが必要で、それらを備えていない印章店では、外注に出さなければならないため、納期に時間がかかると言われています。中には、チタン印が彫れる機械をたくさん持っているハンコ屋さんもあるので、納期を急ぐ場合はハンコ屋さんに相談してみましょう。
チタン印の特長をおさらい!
■主な産地……国産チタン、海外からの輸入チタンも多い
■特徴……錆びにくく、熱にも強いため、欠けにくく歪みも無い。金属アレルギーをおこさない。朱肉の付きがよく、捺印性に優れている。内製するには、専用の機械が必要になる。
■主な彫刻方法……サンドブラスト、ファイバーレーザー加工、放電加工、金属印用印章彫刻機
■お手入れと保管方法……耐食、耐熱で、変形に強いため、チタンの手入れや保管はあまり気を使わなくてもいい。ただし、コンクリートなどの硬い所に落とした時、まれにへこむことがあるので、ケースに保管するなど取扱いに注意する。
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