IT全盛の今でも、確固たる地位を築いているハンコがあります。それが、ご祝儀袋や香典袋などに捺すためのスタンプ「慶弔印」です。より詳しく言えば、のし袋に捺すためのゴム印や浸透印(シヤチハタタイプのスタンプのこと)を、まとめて「慶弔印」と呼んでいます。
ハンコ業界での正式な呼び名は「慶弔印」ですが、伝わりにくいため「のし袋スタンプ」といった名称で販売されています。名前は違いますが、使い方は同じです。
2020年3月24日にTBS系列の人気バラエティ番組「印鑑の世界」の回でこの慶弔印が取り上げられた際は、印鑑専門誌の編集長、真子茂さんが「結婚式の披露宴の席札代わりとして参列者全員分を作って、おめでたい記念品として持ち帰ってもらう」という、新しい使い方をマツコさんに紹介していました。次に結婚される人へのお祝いに使って下さい、というお祝いの気持ちが連鎖するアイテムとしてステキですね。
慶弔印には表書き印、氏名印、金額印がある
慶弔印の特徴は、男女、世代を問わず必要とされる商品であることです。
一昔前なら、年輩の方は筆に慣れているので表書きに苦労はありませんでした。しかし近年では、どの世代であっても、筆に対する苦手意識を持つ方は多くなっているでしょう。特に若い世代では筆離れが進んでいるので、のし袋を購入する際、あらかじめ表書きが印刷されたものを選ぶ例が増えています。
「あらかじめ刷ってあるものを買うなら、慶弔印は不要じゃないの?」と思うかもしれませんが、のし袋には必ず自分の名前や社名、中包みには金額を筆で書く必要があります。その部分にも慶弔印が役に立ってくれるんです。
つまり慶弔印とは、「御祝」、「御香典」などのし書き部分の「表書き印」、自分や会社の名前の「氏名印」、金額を表す「金額印」、さらにそれらを捺印するための「スタンプ台」の4アイテムがセットになったもの、もしくはこの中の1部をセットにした商品なんです。

様々な内容の慶弔印がセットになった慶弔印セットも販売されています。
ビジネス用の慶弔印と家庭用慶弔印は何が違う?
さらに慶弔印には、家庭用とビジネス用の2種類があります。
家庭用の場合、表書き印は「御祝」「御霊前」の2つあればほとんどカバーできます。これに氏名印、金額印、黒と薄墨のスタンプ台があれば十分です。付け加えるなら、表書き印に「御見舞」を加えるといいでしょう。
「御歳暮」や「御中元」、「粗供養」、「満中陰志」、子供が産まれたら「内祝」が必要な場面もあるかもしれませんが、家庭用の場合、百貨店や葬儀業者などが全て手配してくれるので、それらの出番は少ないと言えます。
中小企業は揃える慶弔印が多い?
一方、ビジネス用は様々なスタンプが必要になります。
大企業なら慶事、弔事は業者が手配する例もありますが、それでも必ず必要なのが弔事用の表書きスタンプ。ビジネス用であれば「御霊前」だけでなく、「御仏前」、「御玉串料」、「御花料」など揃えておいたほうがベターです。
中小企業の場合、全て自社で用意する例も多いので、「御歳暮」、「御中元」をはじめ、「粗品」、「御見舞」、「寸志」、「御餞別」、「御年賀」まで必要になります。
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